ポール&リンダ・マッカートニー「ラム」

ラム

ラム

私より5〜10歳程年上の音楽好きの方と会ってポール・マッカートニーの話題となると、微妙に意見が異なることがよくあります。ポールが好き、という点では一致しているので血を見ることはないのですが(笑)、何を最高傑作とするかでは意見が分かれます。ウイングスをリアルタイムで体験したかどうかが大きな分かれ目となるんですね。体験派にとって、ビートルズ以後のポールとはウイングスとほぼ同義であって、一番いいのは「バンド・オン・ザ・ラン」やライブ盤になるのですが、私は今回取り上げた「ラム」なんです。初めてそのことを話したときはけげんな顔をされたのを今でも覚えていますね。語らずとも「あんなのがいいの?」とその眼は語っておりました。自分の例だけで話を一般化するのもどうかと思いますが、同じポール・ファンでも何を最も高く評価するか、という点では世代によってかなり違いがあるのではないでしょうか。私に限っていえば、ウイングス時代のポールはちょっと大味になったような気がするのです。もちろん好きな曲もたくさんあるのですが、何度も聴き返す曲となると、1stの「ジャンク」や「アナザー・デイ」というところに落ち着きます。で、アルバムとなると断然「ラム」。ワイルドなロックから、オーケストラを導入した雄大なポップ、おとぼけ風味のウクレレ使用曲にいたるまで、ポールの全てがここにあると思います。ポップの達人が心のおもむくままに遊んだ着流しの名盤。こんな感じのアルバムをもう一枚でいいから出してくれないかなあ。