11/26 江口玲ピアノ・リサイタル「江口玲と訪ねる世界の巨匠たち(憂愁のロシア)於:浜離宮朝日ホール

音楽仲間のRYOSEIさんのお誘いで、久々にピアノ・リサイタルに行ってきました。1887年製ニューヨーク・スタインウェイを使用した、全曲ロシアもののプログラムです。
詳細は以下の通り。


ラフマニノフ:エレジーOp3-1、道化役者Op3-4
バラキレフ:子守歌
チャイコフスキー:ドゥムカOp59
プロコフィエフトッカータOp11
スクリャービン:練習曲Op8-1,ソナタ第4番Op30


ここで一旦休憩が入り、


ムソルグスキーホロヴィッツ編曲:「展覧会の絵


最初のうちは「さて、ニューヨーク・スタインウェイの音色はいかに」なんて気構えで聴いていた今回のリサイタル。なるほど、ホロヴィッツの演奏にも通じる華やかな音色のピアノのような気がします(はじめからニューヨーク・スタインウェイを使用すると刷り込んでの鑑賞なので、その思い込みの影響が多分にあると思いますが)。ひとつひとつの音に香水を振りかけてあるような、いい匂いのする音で色彩感も豊か。これは低音部で厚い和音をフォルテで鳴らしたときでも、高音部をピアニッシモトレモロをかけたときでも変わらない特色なのでした。ホール映えするサウンドですね。ホロヴィッツのCDを部屋で聴くと、時々妙にそぐわない感じになるのはこの華やかさのせいか、なんて思い当たったりもしました。


前半で特に印象に残ったのはスクリャービンです。それまでの曲に比べて色彩感がぐっと増し、さまざまな色の渦が沸き起こっていくかのような感触。スクリャービンの不思議な魅力を再確認しました。プロコフィエフはいかにも彼らしいパーカッシヴな曲。


後半のメイン・プログラムはホロヴィッツ編曲版「展覧会の絵」。元々ピアノ曲なのに何を編曲しているのかって気もしますが、よりステージ映えのする派手目のものになっているのでした。当のホロヴィッツのアルバムを聴いたのはかなり前のことなので、ほとんど初めて聴くに等しいのですが、最初の「プロムナード」から早めのテンポでぐいぐい攻める演奏に引き込まれていきました。もちろん「古城」でのエキゾティックなメロディや「カタコンブ」など繊細に奏でるべきところはちゃんとそうしているのですが、全体的にはスピード感あふれる力強い演奏。華やかな音色とあいまってポジティヴな印象の「展覧会の絵」と相成りました。重苦しい牛車の歩みを描写したはずの「ビドロ」のリズムなんてえらく力強いビートになっていたなあ。これは不満ではないです。そうした面も含めてたいへん面白く聴くことができました。


江口の演奏を聴くのは初めてだったのですが、終始きちんとした姿勢で強音から弱音まで、しっかりと楽器を鳴らしきっていたように感じました。派手目の曲でも根底にあるのは端正さで、それが音楽を浮ついた感じにさせず、華やかさに溺れないものにしていたと思います。アンコールを4曲も披露してくれたのですが、細やかな音色のコントロールでリリカルさを上手く出していた、シューマントロイメライ」が心にしみる演奏で、彼の本質はこの抒情の方にあるのではないかな?。



終演後は新橋でRYOSEIさんと飲み。セレクト合戦の進捗状況や最近聴いた面白いものについての話から、いつしかハロプロの現状を憂える話題に。なぜか2人とも「道重さゆみ*1のソロが聴きたい」ということで悪魔的に意見が一致する。なんなんでしょうね、これ(笑)。ともあれ、楽しい一夜を過ごすことができました。改めてRYOSEIさんに感謝です。


※江口玲のサイトはこちら
http://www.akiraeguchi.com/index-jenter.html

*1:はてなのキーワード・リンクに「日本5大ナルシストのひとり」って書いてあって笑いました