マーヴィン・ゲイ「ミッドナイト・ラヴ」

Midnight Love

Midnight Love

佐野元春が歌った「ダウンタウン・ボーイ」の一節、「マーヴィン・ゲイの哀しげなソウルにリズムあわせていけば」で彼の名前を知りました。なのに初めて聴いた曲が、このアルバムからシングル・カットされ大ヒットした「セクシャル・ヒーリング」だったので、当時は「どこが哀しいんだろう?」と混乱したものです。「哀しげなソウル」もちゃんと歌っていたことを知るのには、後年「ホワッツ・ゴーイン・オン」を聴くまでの時間を要し、また「セクシャル・ヒーリング」の世界も彼の音楽の大きな要素であることがわかるには、更に時が経ち「レッツ・ゲット・イット・オン」を知る必要があったのです。そうしてマーヴィンの音楽への親しみが増していったのですが、聴き返すのは70年代の作品が圧倒的に多くなっていきました。


かなり久々にこの「ミッドナイト・ラヴ」を聴いたのですが、未だ瑞々しく響くのに驚かされます。発表が82年。あまり予算が与えられなかったため、ほとんどがマーヴィン自身による演奏。時代の影響もありベースやキック、クラッピングなどの音色はかなりテクノ・ポップ色が強いのですが、全ての演奏が抜群にグルーヴして聴く者をぐいぐいと惹きつけていきます。マーヴィンのヴォーカルも力強くかつ繊細。70年代の作品と比べてもひけを取らない名作といえるでしょう。こんなにカッコいいアルバムだったのかと今更ながら気づいた次第です。