ワールド・スタンダード「雪花石膏」(asin:B0002V02QY)

アラバスター

イノトモハナレグミ湯川潮音のプロデュースを通して、ワールド・スタンダード(=鈴木惣一朗)の生み出す音が静かに広まりつつある中、活動20周年記念のオリジナル・アルバムが発表になりました。
ペンギン・カフェ・オーケストラを連想させるインストから、エスペラント語を使用した無国籍ポップス、そして「ディスカヴァー・アメリカ」3部作へとワールド・スタンダードの音楽は変遷を続けていったのですが、それらを踏まえて出来上がった本作は、ジャケット写真のイメージそのままの、陽だまりの郷愁音楽。これまでずっと彼の音楽を聴き続けた人達へのパーソナル・ギフトのような気持ちにもさせる、静かな美しさが全編に満ちていて、20周年記念のお祭り騒ぎ、といった要素がどこにもないのが彼らしいところです。1stに収録されていた名曲「たんぽぽのお酒」が装いも新たに収められている*1のも古くからのファンにとってはうれしい贈り物。サイモン&ガーファンクル「キャシーの歌」のカヴァーもやはりファンにとってはなるほどの選曲。
どの曲もゆったりとしたテンポで、楽器の響きが尊重されたつくりです。1曲目「Beginnings」は武満徹「ガーデン・レイン」を連想させます。続く曲も繊細に音が重ねられ、ストリングスにギター、ウクレレマンドリンバンジョーが絡み、チェロやアイリッシュ・ハープ、スティール・ギター、そしてわずかなエレクトロニクスが彩りを添えます。初めて聴くのに、なぜか懐かしさを感じさせる音楽。かつてエブリシング・プレイ時代のアルバムにつけられたキャッチ・コピー「明日はもっと懐かしい」というフレーズは、このアルバムにこそ相応しい言葉のように思えます。


※この作品について語った、鈴木惣一朗のインタビューはこちら。


http://hotwired.goo.ne.jp/original/worldstandard/

*1:ヴィクセル・ガーランドとの共作アルバム「ジ・アイル」にも別ヴァージョンが収録されているので、今回が3ヴァージョン目