ストレンジ・デイズ12月号増刊「カンタベリー・ミュージック」

カンタベリー

アコースティックな響きを最大限に生かす幻想的なリヴァーブ、これがカンタベリーサウンドの原点だよ。(パイ・ヘイスティングス

2500円と値は張るものの、持っていて損はない特集号。オールカラーなのでジャケットを眺めているだけで楽しい。内容も充実していて、特にインタビューが豊富に掲載されていて読ませます。ロバート・ワイアットソフト・マシーン時代のことをこれだけまとまって話しているのは貴重。他にもケヴィン・エアーズ、パイ・ヘイスティングス、デイヴ・シンクレア、デヴィッド・アレン、リチャード・シンクレア、ヒュー・ホッパー、スラップ・ハッピー、スティーヴ・ヒレッジなど、シーンを担った主要人物が総登場。それだけにとどまらず、アラン・ホールズワース、フィル・マンザネラやリチャード・コフランといった、従来あまりカンタベリーの文脈で語られることの少なかった人や、あまりインタビューされなかった人までフォローしてあるのがうれしいです。監修した松井巧氏も述べているように、カンタベリー・ミュージックを語る場合、ややもすると、ブリティッシュ・ジャズ・ロックやアヴァン・ポップ、リコメンド系までとめどもなく拡散してしまいがち。そこをこの本ではジャズ・シーンなどへ範囲を広げるのは最低限にする一方、スティーヴ・ヒレッジについてはシステム7まで押さえるなど苦心の編集の跡がうかがえますが、結果的に幹の太い出来になったのではないでしょうか。先に出た「ブリティッシュ・フォーク&トラッド・ロック」と同様基本的な資料集として、また楽しい読み物としてずっと手元に置いておきたい好著です。