バーデン=バーデン合奏団「ヒンデミット:室内音楽集(全曲)」

室内音楽

ヒンデミット:室内音楽集

ヒンデミット:室内音楽集

ドイツのハルモニア・ムンディというレーベルの45周年を記念して、代表的な名盤がリマスタリングで発売されていますが、これはどちらかというと古楽が得意なイメージの強いレーベル・カラーの中では異色の、現代音楽作品。20世紀前半に活躍したドイツの作曲家、パウルヒンデミットの作品集です。


熱心なファンの方には怒られちゃいそうですが、ヒンデミットというのはマイナーな作曲家、という印象です。代表曲といえば「画家マチス」、「ウェーバーの主題による交響的変奏」辺りでしょうが、あまり人口に膾炙しているとは思えません。グールドのファンなら彼の演奏を通していくつかのピアノ曲ソナタを耳にしたことがあるでしょうし、ヴィオラを演奏される人、好きな人にとっては重要な作曲家になるでしょうが・・・。


こんなことを最初に書いたのも、なじみがないからといってこれを聴かないのはもったいない、ということが言いたいためで、この2枚組にはクラシック・ファンのみならず、ポップ・ミュージックを好む人にも新鮮で魅力に富む音楽がつまっています。
「室内音楽」と題された、ほとんどが協奏曲の形式を取っている作品を7曲収録。「室内楽」ではなくて「室内音楽」とは耳慣れない言葉ですが、これはBMGの解説を借りると「19世紀以後のコンサート・ホールではなく、バロック時代の王侯貴族の宮殿や館をイメージしています」ということであり、いわゆる「擬古典主義」の創作ということになるのですが、それは一旦頭から振り払った方が、遥かにこの音楽を楽しめます。この乾いた響きの、リズミックでウィットに富んだアンサンブルは、例えばフランク・ザッパの「アンクル・ミート」や、晩年のアンサンブル・モデルンとの共演作「イエロー・シャーク」との親近性を感じさせますし、アクサク・マブールにも通じるところがあるといってもよいでしょう。本当かな?と思われる方も、1枚目冒頭の「第1番Op24-1〜小管弦楽のための〜」を聴いてみれば納得できるんじゃないかと思いますよ。