鈴木慶一ライヴ atグレープフルーツムーン:三軒茶屋

久々の鈴木慶一、ソロ・ライヴに行ってきました。今回は若きライダーズ・ファンのつなまよさんとご一緒。ところが、遠い職場から駆けつけなければならなかった、つなまよさんの到着は開演時刻の19:30をオーヴァー。ちょうど前座のgoatbedの演奏が終了したころ辿り着いたのでありました。なんとか慶一の方にまにあってよかったね。goatbedは、DX−7とMacからのテクノ・ポップ的な打ち込みビートにノイジーなギターというサウンド。でもメロディはポップ路線でありました。良いプロデューサーにめぐりあえばいいものを創れそうな気がします。



さて、いよいよ慶一登場。潔くギターの弾き語りで最後まで通しました。どんな選曲で来るのかと聴衆がかたずを飲んで見守るなか、徐に始まったのは「モダン・ラヴァーズ」。声が太くて、張りがあり迫力があります。調子よさそう。続いて「グルービーに気をつけろ」。おお『モダン・ミュージック』から2連発とは。ここでも堂々とした歌いっぷりですが、「♪油断するんじゃない、俺はロック・スター」の下りで照れ笑いをしてしまうのがなんともいえず慶一らしくて良いです。その後もなかなかひねった選曲が続きます。「大人は判ってくれない」「霧の10㎡」が生で聴けたのはうれしかったですね。会場には結構若くてお洒落な女の子達がいたのですが、そんなの知るかとばかりに「君はガンなのだ」「国民の煙草しんせい」「人間の条件」を畳み掛けたところが前半の山場かな。


後半で(といっても明確な区切りはなかったのですが)、「白と黒」を歌いだしたときは、隣の女の子が感激してお祈りするようなポーズをとっていたのが印象的(どこ見てるんだか)。私がおおっと思ったのはビートニクスのナンバー「大切な言葉は一つ、「まだ君が好き」」でしたね。「夢が見れる機械が欲しい」ではフリッパートロニクス的な音色で即興を披露するなどの趣向もありました。花のお江戸ヴァージョンの「ヴィクトリア」の時は、一度歌い始めたのを止めて「前説しよう」と歌詞の解説をするサービス精神も発揮。そして「月にハートを返してもらいに」で一旦終了。ここではエフェクト操作でエレクトロニカ的なループ・フレーズをつくりだし(ちょっと操作がたどたどしかったのですが、それもまた味でした)、その上でキング・クリムゾンが「ムーンチャイルド」で行ったような、ピアニッシモでの即興プレイを展開していました。
アンコールでは銜え煙草にボトルネック・ギターで「酔いどれダンス・ミュージック」をワイルドに決め、中年ロッカーの貫禄を見せつけて、ライヴは幕を閉じました。


現在新作の制作が進行しつつあるムーンライダーズ。この晩の演奏からは「先」に直接つながるものは私には感じられませんでしたが、それを補ってあまりある「現在(いま)」の慶一の充実ぶりでした。選曲も面白かったし、満足できた夜です。