マイルス・デイヴィス「スケッチ・オブ・スペイン」(ASIN:B00004U56O)

スケッチ・オブ・スペイン

1曲目が有名な「アランフェス協奏曲第2楽章」。クラシックをジャズやポップスに編曲した例は数あれど、ここまで原曲を凌駕した例もめずらしいのでは。原曲の甘ったるい感傷性をギル・エヴァンスが巧みに排除し、精緻な音の綴れ織に仕立て上げたところに、マイルスの繊細でかつ力強いソロが響きわたり、新たな叙情をこの曲にもたらしました。これを聴いてしまうともう原曲を聴く気にはなかなかなれません。しかし、このアルバムの真価は後半の3曲で発揮されます。全てギルの筆によるオリジナル曲で、その完成度は、スペインを題材にするのが得意だった、あのモーリス・ラヴェルをしのいでいるといえるかも。ギルにはマイルスがいたのに対し、ラヴェルにはマイルスにあたる存在がいなかった。この差は大きいですよ。5曲目「サエタ」のソロを聴けばそれがわかるはず。この2人による「トスカ」が実現しなかったのがなんとも残念。