通崎睦美「届くことのない12通の手紙」

12通の手紙

クラシックの棚に置かれることもあるけれど、マリンバにはアフリカやラテンなど様々な国の風が吹いている。ころころと転がるような高音部はキュートだし、深く響く低音部には、どこか宗教的な印象すら感じます。それらを含めて、木の鍵盤から生み出される響きはあたたかく親しみやすい。なんとも魅力的な楽器ではありませんか。そんなマリンバのために、港大尋がサルサ、ブルース、ミニマルなど様々な形式を駆使して書き上げた12通の音手紙を、このディスクの主人公である通崎睦美が読み取り奏でたアルバムです。多彩な響きや技巧を用いながらも、全体としては落ち着いた印象になっています。録音もなかなかのもので、木の響きがうまく捉えられています。
さて、このマリンバ奏者にはアンティークな着物を着こなし、その有数なコレクターでもあるという一面があります。その著書「天使突抜一丁目」天使突抜一丁目―着物と自転車とは京都の生活と着物についての案内が気取らない文章で描かれた好著。自転車に着物姿で乗っている、ハイカラな姿が表紙となっています。こちらもお勧めしておきます。


松岡正剛の千夜千冊:第806夜で「天使突抜一丁目」が取り上げられています。

それにしてもキモノおなごとハイカラ自転車とは、それこそ『三四郎』か『放浪記』か高畠華宵の挿絵以来のこと、よくぞ確立したものだとおもう。