ウェザー・リポート「Mr.ゴーン」(ASIN:B0000027EW)

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「ヘヴィ・ウェザー」と「ナイト・パッセージ」という代表作に挟まれたアルバム。コンセプトが固まりきらずにとっちらかっているところが、今聴くと逆に新鮮です。新ドラマーにピーター・アースキンを迎えた初のアルバムですが、一部の曲ではスティーヴ・ガッドトニー・ウィリアムスを起用しているところからも、アルバムの多様性がうかがえるでしょう。作曲面ではザヴィヌルが「貴婦人の追跡」でワールド・ミュージック的なアプローチを試み、「Mr.ゴーン」ではテクノな4ビートを聴かせます。作品が発表された1978年当時の風を最も受けていたのはジャコパスで、「パンク・ジャズ」なんてそのものずばりなタイトル。「リヴァー・ピープル」もちょっとニュー・ウェイヴっぽい仕上がりです。この二人に比べてショーターは、マイルス時代の旧曲「ピノキオ」の再演など、ちょっとおとなしい。「ジ・エルダーズ」では得意のミステリアスなメロディーを奏でてくれますが。・・・といった具合に3人の向いている方向が見事にバラバラなんですが、そこがいい。聴くたびに何かしら新しい発見があって、シンセの音色などに感じる時代の刻印をとびこえている魅力があります。このグループが孕んでいた音楽的可能性を最も感じさせる一枚。