ビーチ・ボーイズ「スマイリー・スマイル」(ASIN:B00005J4XA)

スマイリー・スマイル

ブライアン・ウィルソンがついに「スマイル」ツアーを開始していますね。萩原健太氏を初めとする現地レポなどを読んでいると、すごい盛り上がりらしく、ぜひとも来日して欲しいと願わずにいられません。35年以上前の夢の挫折に、今、ようやくオトシマエをつけようとしているブライアン。なんという人生。
しかし、このツアーの模様がライヴ・アルバムになったり、あるいはツアーの余勢を駆ってスタジオ入りし、スタジオ盤として「スマイル」が完成したとしたら、今回取り上げた「スマイリー・スマイル」の位置づけはどうなるのでしょうか。ほとんど顧られなくなっていまうのではないでしょうか。気の早い話ですが、なぜかむしょうに気になるのです。
元々カール・ウィルソンの「誰もがホームランを期待しているときに、ぼくたちはバントをしたんだ」という発言もあり、どうしても軽んじられる傾向があるアルバムです。とはいえ、バントといっても殿馬数人の「秘打・G線上のアリア」ぐらいの価値はあるんじゃないかなあ。数曲を除けば、途中で終わってしまっているような曲ばかりという印象なのですが、オルガンのペダル・トーンがもたらす不思議な静謐感や、耳元で歌っているかのようなドライなヴォーカルの録り方など、心ひかれる要素がぽつぽつと点在していて、時々引っ張り出して聴かずにはいられなくなる奇妙なアルバムです。35年以上前の夢が実体として現れることになっても、この夢のかけらを拾い集めたアルバムは忘れずにいたいですね・・・。