ジェームス・ブラウン「LOVE POWER PEACE ライヴ・イン・パリ71」(ASIN:B000001DWX)

JB

日本の現代音楽の作曲家に間宮芳生という方がいます。彼の著作に岩波新書で出た「現代音楽の冒険」という一冊がありますが、学者ではなくて、現役の作曲家が書いただけのことはあって、教科書的な通史ではなく、自身の歩みと方法論が中心となっていて、そこが読みどころとなっています。バルトークジョン・コルトレーンに大きな影響を受け、膨大な民謡や囃子言葉を収集し、それを用いた作品を発表している人なので(「合唱のためのコンポジション」シリーズは広く歌われている名曲。学生時代私も第3番を歌いました。念仏や囃子言葉だけで成り立っている歌詞がユニークで楽しかったです)、ポップスのリスナーが読んでも興味深い記述が多いのですが、その中に間宮自身が65年に書いた「足の裏の音楽」という文章が引用されています。
「黒人は、なぜつまさきでなく、かかとでリズムをとるのだろう」と始まるその文章には、次のような一節があります。

たかが数秒しか要しない、しかし大そう魅惑的なリズム・パターン、あるいは楽想がとらえられたら、それは執拗にくりかえすほかなく、けれどもくりかえされる程に人をとらえて離さなくなるような、決して終わってほしくないような、そんな音楽があるはずだ。

これを読んだ時、反射的に私が思ったことは「それってJBじゃん!」ということでした。長い前ふりでしたが、ようやく本題です。最近でもなにかと話題の多いJBが、あの「セックス・マシーン」発表直後に行われたパリでのライヴ盤。上に引用した文章への模範解答のような演奏が、70分以上に渡ってたっぷり堪能できます。なんといってもベースがブーツィー・コリンズ。その兄弟のキャットフィッシュも参加して、最高のグルーヴをつむぎだしています。ハイトーン連発のホーンズもいい。そしてメンバーを仕切りまくるJB御大も絶好調。JBが生みだしたリズムの解釈は、ファンクに留まらず、20世紀音楽史上の大発明のひとつであることを「足の裏」から納得できる超強力盤。