Hector Zazou「Les Nouvelles Polyphonies Corses」

コルシカ合唱

このアルバムの仕掛け人、エクトル・ザズーはアルジェリア生まれのフランス人です。60年代から活動を始め、アヴァンギャルドなロック・ユニットZNRや、クラムド・ディスクからいくつかのソロ・アルバムを発表してきました。
ザズーは90年代に入って、民族音楽を素材としたプロジェクト的な作品を数枚リリースしています。今回とりあげたのは、その第一弾であり、代表作でもある作品。コルシカ島の合唱音楽が素材となっています。地声による分厚い響きを持った合唱は、ずっしりと大地に根を張っているかのような重量感を感じさせるもの。そこにザズーは自身によるエレクトロニクスをはじめ、何人かのミュージシャンの演奏を加えていきます。アンビエントなエレクトロニクスによって重量感のあるコーラスが包まれ、まるで巨大な岩石が宙に浮いているような印象。秘教的な色彩も加わりました。そこにサックスなどがアンサンブルに絡んでいくのですが、とりわけこの手のアンビエンスなサウンドとの相性が良い坂本龍一の透明な響きのピアノと、ジョン・ハッセルの霧のような音色のトランペットがやはり好演です。