カーティス・メイフィールド「ネヴァー・セイ・ユー・キャント・サヴァイヴ」(ASIN:B00004VP5N)

カーティス

数々の名作を送り出している人だけど、そのなかでもとびきりスイートな一枚ではないでしょうか。全曲ラヴ・ソング。生楽器を中心としたサウンドで、特にアコースティック・ギターと洒脱なホーン・アレンジが本作のカラーを決定づけています。この時期特有の乾いたリズム・セクションが全体の風通しをよくして、これまでのカーティスのアルバムと比べると薄めのストリングスが、いい按配に曲に華やかさを加えているんですね。もうほとんどソフトロック。カーティスのファルセット・ヴォーカルについてはいまさら語る必要もないでしょう。特に前半の4曲が素晴らしくて陶然となってしまいます。後半の聴きどころは、アレサ・フランクリンに提供した「スパークル」のセルフ・カヴァー。力強い歌唱だったアレサとは対照的に、ソフトなアプローチで別の魅力を引き出しています。彼のキャリアの中では地味な位置にあるかもしれませんが、年月を経ても古びない魅力があって、私が一番聴き込んでいるカーティスの作品です。