ミヒャエル・リシェ(p)「1920年代のピアノ協奏曲集Vol.1」(ASIN:B0000V4MCQ)

好企画盤。しかもアルテ・ノヴァからのリリースなので1枚1000円とお買い得です。1920年代、すなわちジャズがこの世に登場してきた年代にスポットをあて、ジャズの影響を受けたクラシックの作曲家のピアノ協奏曲を集めたものです。ミヒャエル・リシェ自身が書いている解説に目を通しながら聴き進むと、ジャズがもたらした「音響」は確かに20世紀音楽の事件のひとつであったことを思い知らされます。


Vol.1はいきなり珍品、アンタイルのピアノ協奏曲第1番から始まります。単一楽章で20分。かなり自由な構成ですね。アンタイルの曲は初めて聴きましたがなかなかユニーク。ただしこの曲は、1922年の完成後、2001年にロンドンで初演されるまで、演奏される機会が全くなかったそうです。

続いてはアーロン・コープランドのピアノ協奏曲。「誰もが一聴してアメリカ風だと認識するような作品を書きたい」と当時望んでいただけあって、かなり大胆にジャズ的要素を(特に第2楽章で)取り入れてます。がんばってビッグバンドしてますが、シンコペーションがスイングしないのはご愛嬌か。なかなか面白い曲だと思いました。ところがこれも初演の評判は散々。「コープランドの協奏曲は最初から最後までおそるべき責苦である。それが音楽と呼べるとするのならば、ノイズを含んでいることくらいだろう」と評されてしまうのです。

3曲目はオネゲル「ピアノとオーケストラのためのコンチェルティーノ」。これは洗練されて、周到に組み立てられた曲ですね。
そして第1集のトリはラヴェルト長調ピアノ協奏曲。これは説明不要の名曲。ラヴェルはエキゾティックな主題を扱うのが抜群に上手いです。というわけで、最後まで興味深く聴くことができた第1集でした。ベストの演奏はオネゲル。明日は第2集を取り上げる予定です。