クロノス・カルテット「ベルク:抒情組曲(オリジナル版)」(ASIN:B0000C4GGC)

クロノス・カルテットも結成30周年になるんですね。86年にノンサッチからデビュー・アルバム「紫のけむり〜現代の弦楽四重奏曲」を出した時のインパクトは大きかったなあ。パンクなファッションで、グラスやナンカロウからジミヘン、ビル・エヴァンスなどまで及ぶ幅が広いレパートリーで、「現代の音楽」をやるならポップ・ミュージックへの視座が不可欠であることを強烈に伝えてくれました。「バンド」っぽいんですよね。彼等の活動や出すアルバムの感触って。「ブラック・エンジェルス」や「ショート・ストーリーズ」ってタイトルもロック・アルバムっぽいし。そんな彼等が結成30周年記念盤の一枚として出したのは、もはや古典になりつつある、ベルクのエモーショナルな名曲「抒情組曲」。最大の特色は当初ベルクが考えていた意図に沿って、最終楽章にボードレールの「深き淵より私は叫ぶ」のドイツ語訳詩を歌詞として復活させ、ソプラノ歌手のドーン・アップショウと共演したことです。もともと劇的な曲だと思っていたけど、そのドラマが一層くっきりとした仕上がりに。緊張感のある好演だと思います。