鏡リュウジ Produce 「SUN SIGN * MOON SIGN」(ASIN:B00007KKY7)

「女性に圧倒的人気の占星術家、鏡リュウジが、太陽と月の星座をモチーフに選曲した2枚組企画盤。オーガニックなインスト・ナンバーが、恋に悩む女性の気持ちを優しく包み込むことでしょう」(CDジャーナル・データベースより)というレビューを読んだり、

自信を取り戻し,表に出てゆこうとするときには、太陽のディスクをかけてみましょう。あなたの内なる太陽は再び燃え盛ります。
一人で力を抜きたいときには、月のディスクをかけてみましょう。あなたの内なる月のしずくがしたたり、あなたを癒すはずです。
(ライナーノートより。文章は鏡リュウジ

なんてのを読んだりすると敬遠しちゃいたくなりそうですが、実は侮れない好企画盤。曲目はポピュラーなものばかりなんですが、参加した顔ぶれはロンサム・ストリングス、エマーソン北村ピアニカ前田、HAKASE−SANと大野由美子栗コーダー・カルテット等々、なんともマニアックで渋い人選。癒し系というよりモンドなアレンジの曲がずらりと並ぶのです。太陽のディスクの1曲目、ロンサム・ストリングスが演奏しているビートルズ・ナンバー「ヒア・カムズ・ザ・サン」はギター、ベース、マンドリンウクレレバンジョーとスティール・ドラムのアンサンブルでゆったりと奏でられる好演。続くエマーソン北村ピアニカ前田によるトッド・ラングレン「アイ・ソー・ザ・ライト」はシンプルなアレンジながらエマーソンのオルガンの音色が心地よいです。栗コーダー・カルテットのスティーヴィー・ワンダー「サンシャイン・オブ・マイ・ライフ」もほのぼのとしていい感じ。月のディスクはK−Taによる「星に願いを」がマリンバジャンベ、バンブー・ウインド・ベルなど変わった楽器を駆使した、マーティン・デニーをちょっと連想させるエキゾチックなナンバーになっていて聴きもの。また、Tanaka Akiraのサティ「ジムノペディ第1番」はグリッチ・ノイズを多用したエレクトロニカ。HAKASE−SANが大野由美子こだま和文と共演しているのは、なんと「朧月夜」。こだまのトランペットはいいですねえ。総じて太陽よりストレンジ度が高いのは、やはり月には狂気の象徴としての側面(ルナティックス)があるから?というわけで、聴きどころがたっぷりあるこのアルバム、今年の新譜で一番の拾い物でした。

(参考)「鏡リュウジの西洋占星術
http://kodansha.cplaza.ne.jp/uranai/kagami/