セレクト曲目発表

前にも触れたセレクトCD、続々と参加された方のセレクションが届けられてひたすら感心したり知ってる曲の登場に喜んだりしています。
今回のテーマは「女性ヴォーカル」。私が選んだ12曲をコメント付きで紹介します。

ザバダック在籍時代からアプローチしていた東欧的な音世界をソロになってからより徹底的に追及している上野洋子。この曲を収録しているアルバム「Puzzle」でも、多重録音を駆使してブルガリアケルト音楽を消化した独自の世界を展開しています。

  • 2)「Thinking of you」(1978) Sister Sledge

序盤はポップに行こうとこの曲を選びました。ナイル・ロジャーズのカッティングからはじまるごきげんな曲。

  • 3)「Let me take you there」(1992) Betty Boo

90年代の初めにちょっと人気が盛り上がったロンドン出身のベティ・ブー。60年代のポップ・エッセンスをちりばめた彼女のアルバムはラップを敬遠しがちな人にも楽しめるものになっています。今回とりあげた曲も例外ではなくて、フォー・トップスをサンプリングしたバック・コーラスがキャッチーなサビと絡むところなんていいですね。しかし驚くのは間奏で突然出てくるBB5「ペット・サウンズ」のメロディー!

今、私が最も注目しているユニットのひとつです。元々は男性4人組だったのですが現在は男女2人組(この曲録音時は3人)になっています。現在のソウル・マナーを生かした重心の低いトラックに、リエンヌこと青木里枝の浮遊感のあるヴォーカルがうまく乗っかっているのがポイント。曲はもはや説明不要の松田聖子ナンバー。シングル「蜜蜂」のカップリングです。イントロや間奏のアレンジなかなか凝ってますね。今年でたアルバム「黒い秘密」は上半期の愛聴盤のひとつ。

  • 5)「Ever so lonely / Eyes / Ocean」(1992) Sheila Chandra

この辺から雰囲気が変わります。80年代にモンスーンというバンドに在籍していたヴォーカリスト、シーラ・チャンドラがソロとしてピーター・ガブリエル主宰のリアルワールド・レーベルから出したアルバムからの1曲で、モンスーン時代の曲をメドレーで歌っています。神秘的な声の魅力を堪能してください。

  • 6)「Dark Angel」(2001) Laurie Anderson

アヴァン・ポップ・アーチストがポップ・マエストロと出あった曲。エレクトリック・ヴァイオリンやボディ・パーカッションなどを駆使したパフォーマンスで注目をあつめたローリー・アンダーソンですが、ここではかなりストレートなヴォーカルを披露。曲の展開に見事によりそう、華麗なストリングス・アレンジはヴァン・ダイク・パークス

ショート・ブレイクとしてこの曲を。声優としても知られる坂本真綾ですが、菅野よう子のバックアップに支えられ歌手としても優れた活動を展開しています。特に2ndオリジナル・アルバム『DIVE』は傑作。この曲はゲームの主題歌だったそうですが、このたびシングルを集めたアルバム「ニコパチ」に収録されたので聴くことができました。ちょっとおどけた歌い方が可愛いですね。

アンネ・ゾフィー・フォン・オッターはクラシック界を代表する歌手のひとりです。クラシックのアーティストがポップスを取り上げるのはよくあることですが、多くは凡庸な選曲とアレンジであまり面白くないものになっています。しかし何事にも例外はあるもの。このオッターの場合は、同じ不満をかねてから抱いていたエルヴィス・コステロがプロデュースを手がけたのですから悪くなるわけがありません。今回とりあげたBB5「You still believe in me」と「Don’t Talk」をはじめ、ロン・セクスミスやケイト・マガリクル、コステロ自身の曲、バカラックとの共作曲などいかに気合をいれてコステロがこのプロジェクトに臨んだのかがはっきりと伝わってきます。圧巻はトム・ウェイツ「ブロークン・バイシクル」とポール・マッカートニー「ジャンク」をつなげたナンバーですが、これはぜひアルバム「フォー・ザ・スターズ」を手にとって聴いてみてください。

「イギリスのバカラック」ことトニー・ハッチはペトゥラ・クラークに有名な「恋のダウンタウン」をはじめとして数多くの名曲を提供してきましたが、その中でも一、二を争う傑作がこの曲でしょう。元々凝った曲が多かったのですが、おそらくブライアン・ウィルソンに刺激を受けたのか、転調に次ぐ転調のオンパレード。けれど全体としてはチャーミングこの上ない曲に仕上がっているのですから見事というほかありません。

  • 10)「Roochoo Gumbo Y2K(Mix on the Beach)」(2000) KALABISA

「ハリー&マック」のレコーディングを終えた細野晴臣久保田麻琴が沖縄に飛んで照屋林賢と結成したユニットがKALABISAです。ところが活動らしい活動はこのシングル1枚出したきり。今の細野さんはスケッチ・ショウで忙しいから当分活動再開はなさそう。曲はハリーファンなら誰でも知ってる名曲。メインヴォーカルは上原知子です。

  • 11)「Chiquichaca」(2003) YUSA

ジューザと発音するそうです。デビューしたばかりのキューバの若手。キューバ音楽の伝統に加えヒップホップ以降の感性がマッチした音楽をやっています。ドミンゴカンデラリオとのデュエットであるこの曲、スパニッシュ・ギターと指音だけでこれだけのグルーヴを紡ぎだしているのがすごいですね。

あっちいったりこっちいったりと落ち着きのない選曲でしたが、最後にこの曲を置けばなんとなく格好がつくかなと思って選びました。多重録音ヴォーカルで始まったコンピなので締めも多重録音ヴォーカルを聴かせるやつにしようってことで。余計なことはいわずにこの力強い歌声に耳を澄ませることにいたしましょう。“Listen to the sound of libety”