ザ・レジデンツ「エスキモー DVD」

huraibou2003-08-28


結成して30年、未だに謎の存在でありつづける集団レジデンツ
1979年に発表された代表作『エスキモー』がDVD版として蘇りました。今や彼等のシンボルともなった「タキシードを着た目玉おやじ」が初めてジャケットに登場したことでも名高いオリジナル版は、3年に及ぶ制作期間の末でっちあげられた架空の電子民族音楽で、寒風吹きすさぶ様を描写したサウンドエイフェックス・ツインが「これぞアンビエントの元祖」と絶賛したとかしないとか。
その一方、ブックレットにはエスキモーの習俗や、アメリカの福祉政策の下、伝統の文化から離れてしまった現状についての文章が記載されていて、さながら「裏ディスカヴァー・アメリカ」といってもよい一面を持ってもいるのです。ヴァン・ダイク・パークスがスティール・ドラムの響きでアメリカに警鐘を鳴らし、レジデンツは北極の風に乗せて警告を送りつける。
エスキモー』発表以後、レジデンツは「もぐらシリーズ」や「アメリカン・コンポーザー・シリーズ」を展開、そんな歩みの中、目玉キャラは残っていったものの『エスキモー』のプロジェクト自体は終了したものと思っていました。しかし、ここに彼等がインターネットなどで収集したという画像を満載して、DVD版が登場したのです。


元々ピーター・ガブリエルトッド・ラングレンと並んでマルチメディアにも積極的な興味を示してきた彼等です。凝ったCGがめまぐるしく画面にひろがっていくわけではないのに、凄まじいまでの効果を画像のひとつひとつが与えていくのです。
全体に陰鬱な青いトーンの画像。そのほとんどが静止画で音楽にあわせて写し出されては消えてゆく。その上にオリジナル・アルバムに記載されていた曲の背景・ストーリーを記した文章がオーヴァーラップしていく…ただそれだけなのにイマジネーションがどんどんふくらんでいき、ひきこまれずにはいられません。ひたすらダーク・ブルーに彩られた映像は最後の最後になって「赤」が現れるのですが、それがもたらす効果と痛烈な風刺の矢は実際に見て確かめてもらうほかないでしょう。


…とマジメな文明批判の作品であるがごとく語ってきましたが、そんな単純な図式におさまるほどヤワな彼等ではありません。オリジナルLP発表後、ディスコ・バージョンの「ディスコモー」*1、を発表したのと同様、このDVDにも謎の音源と画像が収録されていて、その奇妙な世界がなんでここに収録されたのかは意味不明です。どこまでマジメでどこから遊んでいるのか、30年経ってもその底を顕わにしないレジデンツにまたも翻弄される人々の姿を彼等は今日もその巨大な目玉で見つめているのでしょう。

*1:これもオリジナル・ヴァージョン発表後20年経って新ヴァージョン「ディスコモー2000」が出ました