前口上〜今回は全曲デューク・エリントンの「キャラヴァン」です〜
★今回のセレクトは各々が独自に決めたテーマをタイトルにした曲を選ぶという、「タイトルしばり」。私はこの機会に一度はやってみたいと思っていたことを実行してしまいました。それが今回の「全曲同じ曲です」。
★デューク・エリントンの「キャラヴァン」を選んだことに深い理由はありません。ただ気がついてみたら色んなタイプのカヴァーを持っていたし、そのエキゾティックなメロディーが昔から大好きだったというだけです。選曲のために何回も同じ曲を繰り返し聴いたのに未だに飽きないのですから改めてエリントン・ミュージックの深さを実感しました。
★今回色々聴いてみて思ったのは、エリントン本人が一番過激な解釈をしているということでした。ヴァイオリンが現代音楽のようなソロを聴かせる1945年録音版や、エリントン自身がチャールズ・ミンガスとマックス・ローチを従えて、セシル・テイラーや山下洋輔も真っ青なパーカッシヴなピアノを奏でる「マネー・ジャングル」収録のヴァージョンなど・・・。作曲者(厳密には共作ですが)本人がここまでやってくれるんだから、後続も自由な発想でアプローチすることが可能だったのではないでしょうか?
★前置きがすっかり長くなってしまいました。それでは演奏者の紹介です。
1)ボストン・ポップス管弦楽団&デューク・エリントン
収録アルバム「ボストン・ポップスのデューク・エリントン」。最初はやはりエリントン本人にも登場してもらいましょう。1965年タングルウッドでのコンサートのライヴ盤です。オーケストラの指揮はアーサー・フィードラー。
オーケストラのアレンジはエリントンの崇拝者だったというリチャード・ヘイマンが担当。その壮大なサウンドがオープニングにふさわしいと思って選びました。エリントンの低音を効かせたピアノも楽しめます。
2)エラ・フィッツジェラルド
収録アルバム「デューク・エリントン・ソングブック」。
エリントンオーケストラをバックにして堂々と歌うエラの姿はまさに女王の貫禄。ジャズ・ヴォーカルでは今回泣く泣く外したナット・キング・コールと並んで愛聴しています。
3)ローランド・アルフォンソ&ザ・スカタライツ
実はこれだけタイトルが「スキャラバン」なんですね。もちろん<スカ+キャラヴァン>からきたもの。ザ・スカタライツはスカの大御所ですね。東京スカパラダイスオーケストラのヴァージョンの元となった演奏でもあります。
4)ベルリンフィル・12人のチェリスト達
ベルリンフィルハーモニーのチェリストが集まって出来たグループで、ビートルズのカヴァー集など既に何枚もアルバムを発表しています。対位法を生かしたアレンジも凝っていてなかなか聴かせる仕上がりに。収録アルバム「ムーンライト・セレナーデ」。
5)ランバート、ヘンドリックス&ロス
収録アルバム「シング・エリントン」。ヴォーカリーズが得意な名グループによるカヴァー。アニー・ロスのすっとんきょうな歌い方が何度聴いても面白い。
6)4ジャイアンツ・オブ・スイング
ヴァイオリンのジョー・ヴェヌーティ、マンドリンのジェスロ・バーンズ、ギタリスト、エルドン・シャンブリン、ペダル・スティール・ギターのカーリー・チャーラーといった4人の名人が集合したごきげんなアコースティック・スウィング!77年作の「ス・ワンダフル」収録。
7)マーティン・デニー
この人が取り上げていない訳がない、と思っていたらやっぱりありました。ヴァイブの音色がエキゾ感を盛り上げます。収録アルバム「エキゾチカⅢ」。
8)細野晴臣
マーティン・デニーが出たらこの人を選ばないわけにはいきません。89年の名盤「オムニ・サイトシーイング」に収録。ピアノとホーンはエリントン、ギターはレス・ポール、ドラムはジーン・クルーパをシミュレートして造った<架空のドリーム・メンバー>によるキャラヴァンですが、こういうときにもTR−808を使うのが細野らしいところです。
9)チェット・アトキンス&レス・ポール
レス・ポールつながりです。アルバム「チェスター&レスター」収録のリラックスしたスイング感が堪能できる演奏ですね。ギターの音色がまろやか。
11)ベルト・ケンプフェルト
イージーリスニングの大御所ですね。コーラスの使い方がうまい!
12)ニューヨーク・ヴォイセズ
ラストを飾るのは華やかで完璧なコーラス・ワークと高速スキャットを聴かせる彼等。マンハッタン・トランスファーの下の世代です。デビュー・アルバム「ニューヨーク・ヴォイセズ・デビュー!」に収録。