ジューン・テイバー『浜辺へ』

浜辺へ

浜辺へ

ブリティッシュ・フォーク、トラッドはかつてほど熱狂的に聴いているわけではありませんが、私にとって大切な音楽であることに変りはありません。なので、こうした地味な印象を与えるアルバムが国内盤で出るのはとてもうれしく感じます。
ジューン・テイバーは今年64歳となるベテラン・シンガー。1976年にスティーライ・スパンのマディ・プライアと結成したデュオ・ユニット“シリー・シスターズ”で一躍注目を集め、以後は堅実な活動を続け現在に至っています。
このアルバムは2007年作『アップルズ』以来となる最新作で、タイトル通り海をテーマとしています。ジューン自身は海から遠い地方の出身で、このアルバムでは海への憧れの思いをこめて選曲したそうです。ジャケットの落ち着いた淡い色彩がこれぞブリティッシュといった味わいをたたえていますが、内容の方もやはりじっくりと聴かせるもの。伴奏はシンプルこのうえないアレンジが施され、テイバーのアルト・ヴォイスも声を張りたてることなく、ひとつひとつの言葉をかみしめるように歌っています。派手なところは一切ないのですが、その分じっくり耳を傾けることができ、その奥深い世界に引き込まれてしまいますね。