鈴木大介『キネマ楽園4 The Fantasy of Nino Rota』

キネマ楽園4 The Fantasy of Nino Rota

キネマ楽園4 The Fantasy of Nino Rota

このブログでは何度も登場しているギタリスト、鈴木大介の新譜は人気シリーズとなった映画音楽集「キネマ楽園」の第4弾です。晩年の、やはり映画をこのうえなく愛した作曲家・武満徹に「今までに聴いたことがないようなギタリスト」と評されたことで注目を集めた鈴木は、クラシック・ギタリストとしてもバリオス全集や現代音楽など幅広いレパートリーを持っていますが、映画音楽にも人一倍こだわりつづけています。「キネマ楽園」シリーズ以外でもブランドン・ロスらと組んだ武満の映画音楽集「夢の引用」や、鬼怒無月とのユニット「The Duo」でも映画音楽を多くカヴァーするなど、そのこだわりはもはやクラシック・ギタリストの余技を超えた、ライフワークといってもいいくらいではないでしょうか。
今回のアルバムはこれまでのオムニバス作品集から、副題にあるとおりニーノ・ロータにスポットを集めたのが新趣向。さらに曲によって松尾俊介(g)、吉野弘志(b)、北村聡バンドネオン)、芳垣安洋(ds,per)といったゲスト・ミュージシャンを招いているのも見逃せません。結果、これまでのキネマ楽園シリーズと比べて格段にカラフルな楽しい一枚に仕上がりました。突飛なアプローチはせず、あくまで曲の良さを引き出すことに専念し、特にマニアックな選曲はしないのがキネマ楽園シリーズの特徴ですが、それだけにどんな有名曲でも陳腐なものにせず、瑞々しく響かせる鈴木の歌心と確かな技巧が光ります。BGMとして流すのもよし、静かにじっくりと耳を傾けるのもよしのお得盤。