SCLAP『BUILD & SCRAP』

Build&Scrap

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先日鈴木慶一のソロを取り上げましたが、今年のムーンライダーズのメンバーは結成35周年というメモリアル・イヤーを意識してか、ソロ活動も活発です。中でもムーンライダーズ・ファンの枠を超えてアピールしそうな魅力を最も持っているのが、このSCLAPの1stアルバムでしょう。このSCLAPは元々白井良明とバガボン鈴木、鶴谷智生によって2002年に結成されたバンドなので結構な歴史があるのですが、そこに武川雅寛が新たに加わることで、待望のアルバム発売と至ったのでした。
私はこのアルバムで初めて彼らの音に接して、残念なことにライヴを観ることができなかったのですが、アルバム全体としては、“キング・クリムゾンポスト・ロック的解釈”という印象を抱きました。白井良明ロバート・フリップエイドリアン・ブリューをひとりでやっているような、トリッキーかつ切れ味鋭いギター、武川のヴァイオリン、なによりも「21st Century Schizoid Man」をカヴァーしていることからも、キング・クリムゾンの影を彼らの音楽に見出すのは容易です。ムーンライダーズのカヴァー「旅のYOKAN」も、ジョン・ウェットンがつくるバラード的な位置に収まっています。とはいえ、クリムゾンが持つ静と動の極端なコントラストや息詰まるような緊迫感はSCLAPにはありません。その代わり、シャープで軽快な躍動感と爽やかさが彼らにはあります。そして、爽やかさの中にメンバーそれぞれがこれまでのキャリアで培ってきたコクが溶かし込まれていて、音楽に厚みを与えているのがしっかりと伝わってくるのですね。長く聴き続けられそうな佳品だと思います。