スティーヴン・オズボーン『ラヴェル:ピアノ独奏作品全集』

Complete Solo Piano Music

Complete Solo Piano Music

スコットランド出身のピアニストによるラヴェル全集。いやあ、これは今まで聴いてきたラヴェルピアノ曲集の中でも最高の一枚です。こんなに素晴らしいピアニストのことを知らなかったとは、己の不明さを恥じ入るばかり。しかも今年の1月に来日していたというのですから・・・もっと早く彼のことを知っていれば何が何でもかけつけたのに!
ハイペリオンからリリースされているこの全集ですが、ハイペリオンからは既にヒューイットの、これもまた高い完成度を誇るラヴェルの全集が出ています。自社のカタログの曲を出きるだけかぶらせないようにしているハイペリオンが、にもかかわらずこのオズボーンの全集をリリースに踏み切った、ということからもその出来栄えがうかがえるというもの。硬質で澄んだ音色と確かな技巧がラヴェルの精緻な世界の魅力を存分に表現して間然とすることがありません。とりわけ「夜のガスパール」中の「オンディーヌ」冒頭部などで聴かれる弱音の響きが美しい。2枚組のどの曲をとっても完成度が高く、当分私のスタンダード・ディスクとなりそうです。