2/20 『眠る動物達の夢』Mio Fou/渋谷毅&小川美潮@公園通りクラシックス

今年の初ライヴはありそうでなかった組み合わせのジョイント・ライヴでした。Mio Fouのライヴを観るのはこれで3度目。まさかこんなに活発に活動を続けるとは全く思ってなかったです。鈴木博文の、ムーンライダーズやソロでは見せることのない一面を知ることができるこのユニットは、ライダーズメンバーの課外活動の中でもかなり好きな方に入ります。一方、小川美潮については、チャクラのころからのファンとはいうものの、生のステージを観るのは初めて。それが大好きなジャズ・ピアニストである渋谷毅と組んでのステージなのですから、いやがおうにも期待は高まりました。
まずは小川・渋谷組が登場。名盤『檸檬の月』の冒頭を飾る「はじめて」でスタートです。その「はじめて」こそ、やや緊張していたのか、ちょっと声が出てないかな?と思ったのですが、合い間合い間に天然なトークを挟みつつステージが進行するにつれ、どんどん調子が出てきました。その独特の歌いまわしや天真爛漫さは矢野顕子を連想させるところが多いのですが、矢野顕子の持つ肝っ玉母さん的な包容力は小川美潮にはあまり感じられません。その代わり、ちょっと目を離すとどこに行ってしまうか分からないようなスリルや、若鮎や野うさぎのような躍動感が彼女にはあります。目を閉じて聴き入っていると、自分が地下の空間にいることを忘れ、野原でスキップをしているような気分になることもしばしば。いわゆる“ノリ”や“グルーヴ”といった表現では掴まえきれない、心弾ませる歌をこの夜はたっぷり聴かせてくれました。
休憩を挟んでMio Fou登場。美尾洋乃がピアノ、ヴァイオリン、ピアノ。鈴木博文がベース、ギター、リコーダーを操り、アンビエント感覚をもったアコースティック・アンサンブルを奏でてくれました。使用している楽器は小川&渋谷より多いのに、色鮮やかなカラー写真のような小川&渋谷に対して、Mio Fouは淡い水彩画のような印象を感じさせるところが音楽の面白いところ。内面に沈潜していくようでありながら、ふと、静かな水面に漣がたつように歌が立ち現れて、外に向かって音が開かれていくそんな瞬間を何度も体験させてくれました。
アンコールは全員で2曲。「マヌカン」とまさかの「福の種」。眠る動物もとびおきてしまうかのような音頭で不思議な一夜は幕を閉じたのでありました。