12/10 moonriders LIVE 2010 “PRE-FLIGHT”@SHIBUYA-AX

結成35周年を目前に、ますます意気軒昂なムーンライダーズ。その好調さを存分に見せつけたライブに行ってきました。開演前、諸注意を告げるアナウンスからしてふるっていて、大体のところでは「携帯やカメラでの写真撮影はやめてください。もし見つけたらデータを回収して・・・後で何かに使うかもしれません」とか、「ステージ前に駆け寄ったり、椅子に上がって踊るのは危険です、お互い年を考えましょう」と早くもネタを仕込んできました。
やがて非常灯も消え、開演。かすかな赤い灯が舞台袖にちらつきます。聴こえてくるトランペットの音。まず現れたのは赤いランタンを手にした、かしぶち哲郎武川雅寛でした。かしぶちは赤いマフラーで渋く決めているのに対し、武川は上も下も真っ赤な衣装。赤は還暦の色でもあるし、クリスマスカラーでもあり、なによりもムーンライダーズのイメージ・カラーということで、実にぴったりな衣装でありました(^^;)。かしぶちはステージ前方に置かれたスネアの席に座り、武川はトランペットをフラット・マンドリンに持ち替え、おもむろに歌いだしました。曲は「地下道Busker's Waltz 」。歌詞が60歳ヴァージョンになっていたかな?ここでようやくこのコンビが最近還暦となった人(かしぶち)と、もうすぐ還暦を迎える人(武川)という取り合わせであることに気がつきました。「地下道Busker's Waltz 」に続いて、かしぶちのアコギと武川のヴァイオリンで「D/P」。そしてようやくメンバー全員が揃い、更にかしぶち曲「さすらう青春」。ムーンライダーズ、今年最後(ですよね)のステージのオープニングは、かしぶち哲郎還暦祝い特集でした。
この日はまだまだかしぶち曲で攻めます。白井のギターがむせび泣く「バックシート」。ここから「鬼火」〜「ブラッディ・マリー」(!)〜「さよならは夜明けの夢に」〜「独逸兵のように」と比較的初期の曲が続いたのですが、インスト・パートの比重が高く、全体が組曲のように続けて演奏されたこともあって、まるでブリティッシュプログレ的な重厚感と構成美を聴かせてくれました。官能的な音色で縦横無尽にかけめぐる白井のギター、ずっしりとした低音を響かせた鈴木博文のベース、裏方に徹しつつも時折ロキシー・ミュージック時代のイーノのようなぶっとんだソロを奏でた岡田、曲毎に楽器を使い分け、絶妙のカラーリングを施す武川、超絶技巧のアンサンブルではないのだけど、実にプログレしているコクのある演奏でしたね。あ、慶一のヴォーカルも味があってよかったですよ。取ってつけたような感想ですみません(^^;)。また、ライティングの美しさも特筆すべき魅力でした。
本編後半は一転して、アップ・テンポ中心で観客を盛り上げます。まずは「スイマー」でガツン。そして珍しい曲をやる、と「檸檬の季節」。またもかしぶち曲「Frou Frou」。ギター番長白井の音頭で客席が「フッ・フッ・フー!」とコールした「犬にインタビュー」はまるでストーンズ「ブラウン・シュガー」のようなノリでした。続く「今すぐ君をぶっ飛ばせ」で客席もほぼ総立ちになってきたところで、高速スカ・ヴァージョンの「モダン・ラヴァーズ」が鳴り響きます。博文がハンドマイクを手に熱唱また熱唱。なんと客席に降りてきてブルース・ハープを吹きまくるというノリの良さにびっくりです。そこからまたまたかしぶち作のクリスマス・ソング「スプーン一杯のクリスマス」と一気にたたみかけていきました。
そして本編ラスト。慶一が2001年作の名盤「ダイヤモロンズ・トリビューン」が来年再発されることを告げ、「なので最後は、「イエローサブマリンがやってくる、ヤア、ヤア、ヤア」を・・・踊ります!」と力強く宣言。岡田以外のメンバーがステージ前方に集合し、ダンス・パフォーマンスを披露してくれました。カッコいいんだか悪いんだか判断停止状態になる、珍妙な(失礼!)ダンスで大爆笑。弾けつつもどこかぎこちない所が不思議にチャーミングで、ダンスの質は比べものにならないのに何故かSMAPや嵐を連想したのは何故でしょうか。ダンスでソロ回しをしたところでは「これは「Perfumeの掟」のムーンライダーズ版か!」とすら思えて感動しちゃたのですから、いやはや、ファンというのは盲目的ですねえ(^^;)。

アンコールも充実したものでした。最初はシングル「ゲゲゲの女房のうた」にも収録されていた「くれない埠頭2010」。サイケでドローンな音響が全体を支配する長尺アレンジが、名曲とはいえ何度も何度も演奏され、マンネリの危険と隣り合わせになっているこの曲に新たな命を吹き込みました。続いてスペシャル・ゲストに小島麻由美が登場!もちろん演奏するのは「ゲゲゲの女房のうた」です。これはうれしいクリスマス・プレゼントでした。ここでようやく「もう全員知ってると思うけど」、メンバー紹介。ソロ活動の盛んなライダーズなので、メンバーの今後の予定のPRタイムと化していました。最後は慶一が「来年は35周年なので、後半は新作を出してツアーもやります」と締めて最後のアンコール・ナンバーへ。なんと慶一がドラム・セットに座って、この日の主役だったかしぶちがハンドマイクをもって前に出てきました。ミラーボールの光も煌びやかに「ガールハント」。もう「かしぶち哲郎ディナー・ショー」としかいいようのない世界で、これはかしぶちファン大歓喜ですね。あっというまに感じられたステージでした。ステージ全体の完成度、演出の見事さはここ何年かの彼らのライブの中でも屈指のものだったのではないでしょうか。ベテランの貫禄とやんちゃな精神が両立している、現在のムーンライダーズの魅力が全開となった最高に楽しい一夜でした。