アントニオ・カルロス・ジョビン『イネージト』

イネーヂト

イネーヂト

今日はジョン・レノンの命日であると同時に、アントニオ・カルロス・ジョビンの命日でもあります。どちらも尊敬する音楽家ですが、レノンは先日のリマスター盤発売の際にたっぷりと聴いたので、今日はジョビンの音楽に耳を傾けています。
『イネージト』は1987年、ジョビン60歳の記念にと、ブラジルの財団が制作をもちかけてできたアルバムで、当初は関係者にしか配られなかったそうです。過去にはクラウス・オガーマンの流麗なオーケストラ・アレンジが施された名盤をいくつも世に送り出してきたジョビンですから、その気になればより豪華なアレンジや著名なゲストを多数招いた、いかにも記念盤といったアルバムを制作することもできたでしょう。しかし、ここで彼が選んだのは気心の知れた仲間と共に、室内楽的なサウンドで親密な音楽をつくりあげることでした。どこまでも耳に優しく、心地よく流れていきながらも聴き終えた後には深い感銘が刻まれます。洗練を極めながらも、気取りや独善といった言葉とは全く無縁なところで響く、20世紀が生み出した至上のリラクゼーション・ミュージックを残してくれた、素晴らしきジョビンに今宵は改めて感謝の意を表したいと思います。