11/6 ヘナート・モタ&パトリシア・ロバート ジャパン・ツアー2010「イン・マントラ」@EATS and MEETS Cay

ライブ三昧の一週間の締めくくりとして、ヘナート・モタ&パトリシア・ロバートの「イン・マントラ」公演に行ってきました。彼らはブラジル内陸部ミナス・ジェライス出身のデュオ。これまでに6枚のアルバムを発表しているのですが、恥ずかしいことに、つい最近まで全くノーチェックでした。ところがある日、タワレコが発行している「intoxicate」誌に掲載されていた「イン・マントラ」の紹介文を読んでにわかに興味が高まったのです。ブラジルのミュージシャンがヨガのマントラを歌う?去年鎌倉の光明寺で公演?ニューエイジっぽいのかと思ったら、高橋健太郎氏が絶賛している?・・・気になってあれこれチェックしてみたら、カルロス・アギーレを愛聴している方の多くがこのデュオに関心を持たれていることがわかり、これは行かねば、と慌ててチケットを購入しました。
EATS and MEETS Cayに行くのは今回が二度目でしたが、中に入ると以前テーブルが置いてあった、ステージに近い空間に畳がしかれていました。間近で聴こうかしばし悩みましたが、リラックスできる椅子席での鑑賞を選択。他の方も同じ考えだったのか、まず椅子席の方から埋まっていました。そうこうしているうちに開演時間に。まずはヨガの先生が登場。マントラについての説明と簡単な実践がありました。眼を閉じて、胸とお腹に手を当ててゆっくりと呼吸しながら短いチャントを唱える。続いて先生の唱える長いチャントを聴きながら、光をイメージして自分の内に取り込んでいく動作を数回。連日アッパーなコンサートに参戦していた私の体と心が徐々に、これから始まる音楽を迎え入れることができるようにチューニングされていくようで、ありがたかったです。
そしてミュージシャンが入場して、演奏が始まりました。ヘナートとパトリシアに加えて、ショーロ・クラブの沢田穣治、シタール奏者のヨシダダイキチハーモニウムのMaya、タブラでU-zhaanを迎えた編成です。ここで奏でられた音楽のことを、さあ、どう表せばよいのでしょうか。ブラジル音楽とインド音楽フュージョン、と書いて済むならこれほど楽なことはありません。空の彼方まで伸びていくようなパトリシアの歌、大地のような包容力と温かさをもつヘナートの歌が、ゆったりとうねっていく演奏と一体となって現出する豊穣な時間と空間。ブラジルやインドだけではなく、ときにアラビックでもあり、ケルティッシュですらある多様な響きの美しさは例えようがありません。もし桃源郷というものがあったとしたら、そこにはいつもこんな音楽が流れているのでは・・・と思う瞬間が何度もありました。途中からはすっかり夢み心地になって没入しているうちに終了。音楽という名の光が観客ひとりひとりの胸に宿ったのではないかと思わずにいられない、素晴らしいライブでした。