ワールド・スタンダード『シレンシオ』

SILENCIO

SILENCIO

ごく初期をのぞいて、ワールド・スタンダード名義でのアルバムはインストであることをこれまで貫いてきた。しかしこの『シレンシオ』はヴォーカル・ナンバーが多くを占める。本来ならかなりドラスティックな変化であるはずなのだが、これまでの流れの延長線上としてごく自然に受け入れることができる。静かな祈りが全編を浸している、心洗われるような音楽だ。
twitterでもつぶやいたけど、カルロス・アギーレの音楽が本格的に国内に紹介され、初来日が実現した年に、中島ノブユキメランコリア』とこのワールド・スタンダードの新作がたて続けに発表されたのは単なる偶然とは思えない。カルロス・アギーレに代表されるネオ・フォルクローレ(とりあえずそう名づけておく)と彼らの音楽は深いところで共鳴して、産毛のような繊細でやわらかな美しい世界を見せてくれている。ムーヴメント、と呼ぶにはあまりにフラジャイルなつながりだけど、だからこそこれらの音楽は私にとっていとおしく響く。