中島ノブユキ『メランコリア』

メランコリア

メランコリア

中島ノブユキの音楽を聴く体験は人の少ない美術館で心ゆくまでお気に入りの絵を眺めて巡って行く感覚に近い。ひとつひとつの作品は端正な佇まいをもち、激しく己を主張することはないけれど、じっと耳を傾けているうちに秘められた色彩を感じ取り、感情のグラデーションが波うつ。メランコリーを人間のもっとも高貴な感情だと話していたのは確かヴァレリー・アファナシェフだったか。この音楽はメランコリックではあってもセンチメンタルではない。乾いた響きの中に淡い哀しみの影がゆらめく。