ALMENDRA『ALMENDRA』

Almendra

Almendra

相変わらずアルゼンチンものをあれこれ漁って聴いているのですが、最近はスピネッタにはまっています。彼のプロフィールについてあまり詳しいことは分からないのですが、アルゼンチンのロック・シーンにおいて長きにわたり重要な存在であり続け、かのモノ・フォンタナも彼のバックで演奏していたことがあったそうです。2000年代になって発表されたアルバムを数枚聴いてみましたが、実にユニークな音楽性で中毒性がありますね。カエターノ・ヴェローゾドナルド・フェイゲンが融合した感じといえばいいでしょうか。とらえどころが無いのに、妙に耳に残る不思議なメロディーがカエターノを思わせる官能的な歌声とスティーリー・ダンのような洗練されたバッキングによって奏でられるのですが、意表をついた仕掛けが随所に施されており、先が読めない、変態的AORと呼びたい世界が拡がっていくのです。いつかきちんとした形で日本に紹介されて欲しいですね。
さて、そんなスピネッタのキャリアの出発点となったのが1967年に結成されたグループ、ALMENDRA。今回取り上げたアルバムは1969年に発表された1stアルバムです。ブラジルでのムタンチスに近い位置にあったのかなあ。ビートルズやサイケの影響を受けつつも、南米的なコーラスワークをびしっと決めたり、ジャズ的なセンスを感じる曲やバンドネオンとストリングスが美しいバラードの名曲があったりと多彩な内容ですが、トータリティもあります。独特の摩訶不思議な魅力をもつメロディー・センスは既に全開。まだまだ世界には自分の知らない素晴らしい音楽があることを改めて実感させてくれる名盤です。