フレネシ『メルヘン』

メルヘン

メルヘン

カヒミ・カリィがアーティスティック路線をひた走り、スパンク・ハッピーは既に解散、インスタント・シトロンはいっかな活動再開の気配が無いというこの21世紀、ウィスパリング・ヴォイス・ポップスファンにとって干天の慈雨となったといっても大げさではないのがフレネシの登場でした。いや、今のカヒミさんの音楽も素晴らしいんですよ。いまさら「マイク・オールウェイズ・ダイアリー」や「キャンディ・マン」のような曲をやって欲しいなんて思いません。でも耳の奥をくすぐられるような囁き声と胸弾むようなポップ・ソングを聴かせてくれる人はいつの時代にもあって欲しいものなんです。そこでフレネシですよ。曲数が少ないのであっというまに聴き終わってしまうことを除けば、前作『キュプラ』よりキュートで魅力的なアルバムになっています。本作ではテクノ・ポップ度が高まり、「コンピューターおばあちゃん」のカヴァーまで披露してくれているのですが、“テクノ歌謡アルバム”とひとことでは片付けられない多彩さもあります。もともと彼女の音楽にはどこまでが計算でどこまでが天然なのかが容易につかめない謎めいたところがあり、その解けるはずのない謎にそれでも迫りたくてつい何度もCDをリピートしてしまうのですね。