Blue Marble『ヴァレリー』

ヴァレリー

ヴァレリー

まさに一日千秋の思いで待ち望んでいたアルバムのリリースです。ショック太郎さんが自身のサイトを通してデモ音源を配布してからもう何年経ったのでしょう。私を含めた多くの人がデモとは思えないクオリティの高さに驚嘆したことが懐かしい。きっとYENレーベルを主宰していたころの細野晴臣がこのデモを聴いたなら、きっとゲルニカと同様に「このまま出しちゃえ!」とGOサインを出していたであろうことは想像に難くありません。その後「懐かしのバイアーナ」がコンピレーション盤に収録されて、さらに2007年には初ライブも敢行と、その歩みは順調にみえましたが、そこから更に3年の月日が過ぎ去り、ようやくここに彼らの歩みが『ヴァレリー』という形になって、より多くの人の耳に接するようになったことに感慨を禁じえないものがあります。
田中雄二氏の熱のこもった『ヴァレリー』レヴュー(http://d.hatena.ne.jp/snakefinger/20100907)は必読ですが、それによるとアルバム制作には「未完成だった『スマイル』を完成させるようなつもりで」臨んだとあります。そういえばブライアンが『スマイル』を完成させたとき、誰よりも熱い感想を書かれていたのはショック太郎さんだったな・・・なんてことも思い出したり。難産の末に誕生したこのアルバムですが、時代におもねったサウンドにはなっていないため、今この瞬間に生み出されたように新鮮に響くことには驚かされます。私はこのアルバムを人に説明するとき“鈴木さえ子meetsハリー細野”とこれまで表現してきて、今もその思いには変り無いのですが、鈴木さえ子細野晴臣を知らない人でも惹きつけることができる力がこの音楽にはあると思うし、そうあって欲しいと思います。今この時代の音楽としての輝きを放ちながらも時を越えた魅力をもつアルバム。

さあ どんなに悲しいことがあっても
さあ どんなに世界が変わっても
君のそばで 夢の果てで
歌は響くのさ
―「スティール・バンド・トリニダード