Great 3『Begin the Begin』

Great 3

どこかで聞いたことのあるグループ名ですが、これは菊地雅章ゲイリー・ピーコック富樫雅彦によるトリオ名。1994年の録音です。この顔合わせならば完全即興演奏だけでアルバム1枚つくっても何らおかしくはないのですが、ここで彼らが取ったアプローチは曲を重視したもの。富樫作の名曲「ワルツ・ステップ」などオリジナル・ナンバーもやっていますが、中心となるのは「サマータイム」「ミスティ」「ビギン・ザ・ビギン」「峠の我が家」といったスタンダード。しかも即興パートは抑え目にしてあくまでも原曲のメロディを大切にする方向で演奏されているのです。だからといってこの3人が集まって普通のスタンダード集になるわけがありません。原曲の枠のなかにあえて留まりながらも、その枠を突き破るギリギリのところでイマジネイティヴインタープレイが展開されているので、独特の緊張感が漲っており、それがメロディーの美しさをより引き立たせる効果を挙げているのです。トリオ形態だけではなく、菊地とピーコックのソロが各1曲、菊地-富樫、菊地-ピーコックのデュオがそれぞれ1曲収録されているのですが、富樫のソロは本人が固辞したため演奏されなかったのが残念。