ランディ・ニューマン『harps and angels』

Harps & Angels

Harps & Angels

国内盤が出たら購入しようかと思っていたのですが、どうもその予定が無いことに加えて、ショック太郎さん(id:bluemarble)が激賞し「ミュージック・マガジン」誌がロック(アメリカ)の年間ベスト1に選んでいたので今年の初買いとして入手しました。そして予想以上の充実した内容に驚いています。
純粋な新作としては「バッド・ラヴ」以来となる本作ですが、何か新境地を開いているというわけではありません。往年の名作『セイル・アウェイ』や『グッド・オールド・ボーイズ』と続けて聴いても特に違和感はないでしょう。ブルース、カントリー、ミュージカル、ジャズ・・・etcといったアメリカン・ミュージックを独自に昇華したいつもながらのニューマン節がどの曲からも響いてきます。この音楽を“21世紀バーバンク・サウンド”と呼ぶのはたやすい。けれどもこれは例えばハーパース・ビザールのようなファンタジックな桃源郷としてのアメリカを描いているのではありません。うっとりするようなサウンドや切ないメロディにのせて「僕たちが金持ちになろうが、君らが落ちぶれようがジャクソン・ブラウン以外は気にしないさ」とか「ジョニー・クーガーも秋にはトヨタのことを歌っているだろうね」(いずれも「A Piece of the Pie」の一部を意訳したものです)といった現在のアメリカを痛烈に風刺している歌詞が歌われているのです。もちろん、これだってニューマンが昔からやってきたこと。しかしこのアルバムは懐かしさを拒み、あくまで今の音楽としての輝きを放っています。音楽の素晴らしさ、新しさとは何かということを改めて考えさせてくれる、年の初めに聴くのにふさわしい傑作。