ポール・ウインター・コンソート『イカロス』

イカロス

イカロス

連日の暑さで更新も夏バテ気味です。皆様もお体にはお気をつけて。
さて、今ではニューエイジの人、というイメージが強いポール・ウインターですが元々はジャズ・ミュージシャンで、ボサノヴァにも興味を示した時期があり、カルロス・リラとの優れた共演アルバムも発表しています。そんな彼の今日につながるターニング・ポイントとなったのが、1972年にポール・ウインター・コンソート名義で発表されたこのアルバム。ただし、ニュー・エイジというよりもジャズの要素を持つ室内楽と思ったほうがしっくりきます。後にオレゴンを結成することとなる、ギターのラルフ・タウナーシタールやタブラを奏でるコリン・ウォルコットオーボエイングリッシュ・ホルンのポール・マッキャンドレスが在籍していたこともあり、ジャズにとどまらず、クラシックや民族音楽の要素が典雅なアンサンブルに溶け合っていることが特徴です。数曲ではヴォーカル曲もあり、特殊な編成なのにそれをあまり感じさせない聴きやすさがあるのですね。タイトル・チューンはラルフ・タウナーの曲で後にタウナー自身もたびたび取り上げている代表曲。この曲のみならず、アルバムを通してタウナーの曲の美しさが光りますね。全体のまとまりの良さと気品はプロデュースをてがけたジョージ・マーティンの手腕によるところも大きいでしょう。彼自身もこのアルバムの出来には満足していたらしく、自伝の中で「私が制作した中で最もすぐれたアルバムである」とまで書いています。最もすぐれた?いや、確かに良いアルバムですが、自伝のこのくだりを読んでジョージ・マーティンは途方も無く大きなものを忘れている!と思ったのは私だけでしょうか。・・・やはりあのグループは特別枠ということでしょうね(笑)