マギー・ライリー『ローワン』

Rowan

Rowan

80年代前半のマイク・オールドフィールドのアルバムで透明な美声を披露していたヴォーカリスト、久々のソロ・アルバムです。70年代の大作主義から80年代になってポップな面も見せ始めた当時のマイクの路線が評価されたのは彼女の貢献も大きいはず。ヒットした「ムーンライト・シャドウ」(Andyさんの日記でも最近とりあげられていました)や彼女が本格的にソロ活動を開始したのは90年代になってからで、1st『エコーズ』と2nd『ミッドナイト・サン』はリアルタイムで聴きましたが、「なんだか普通のポップスになってしまったなあ」という印象だけが残り、今では手元にありません。その後はヴァルティナとコラボーレションしたりとワールド・ミュージック的な展開もみせていたようですが・・・。

しかし、この新作はブリティッシュ・フォーク・トラッドにぐっと接近した、シンプルな中にも味わいのあるアルバムで、「こういうのが聴きたかったんだよ!」と喝采を贈りたくなりました。決して派手ではないけれど、この先も長く聴き続けることができそうな好盤です。イアン・マシューズとのユニット“プレインソング”でもおなじみのアンディ・ロバーツが参加しているのもうれしい。楽曲もペンタングルで有名な「Once I Had A Sweetheart」、シャーリー・コリンズ、スティーライ・スパンが取り上げた「All Things Are Quite Silent」、スコットランドの有名なトラッド「Wikd Mountain Thyme」といったバラッドがオリジナルと併せて収録されています。ベストはサンディ・デニー作の名曲「時の流れを誰が知る」のカヴァー。アンディ・ロバーツの繊細なアコースティック・ギターをバックに静かに歌われています。力みのない、自然な歌唱が曲の良さを充分に引き出している名演といえるでしょう。これを聴けただけでもこのアルバムを購入した価値がありました。