ニルソン『ランディ・ニューマンを歌う』

ランディ・ニューマンを歌う(紙ジャケット仕様)

ランディ・ニューマンを歌う(紙ジャケット仕様)

ドアーズの陰に隠れてしまっている感がありますが、今年はニルソンもデビュー40周年ということで紙ジャケ化が進行しております。彼の初期のアルバムはどれも私にとって宝物のような存在ですが、一番繰り返して聴いているのがこれです。タイトル通りランディ・ニューマンの曲をニルソンが歌ったアルバム。ランディ自身の歌ではシニカルに響く曲もニルソンが歌うと甘さと切なさが前に出る。とはいってもニルソンの歌は本質的にはエモーショナルなものなので、ただ甘ったるいだけのものにはなっていません。ニルソンの歌とランディ・ニューマンのピアノ、時々加わるSE。たったそれだけのシンプルきわまりない、けれどもとてつもなく芳醇な音世界がここにはあります。「デイトン・オハイオ1903」の途中で差し挟まれる「ムーンライト・セレナーデ」の一節には何度聴いても胸が熱くなるのを抑えることができません。初期ニルソンの作品にはこのようなコラージュ感覚や、1971年の時点で既にリミックスの発想で制作された『ニルソンの詩と青春』のような、現在の音楽にもつながる要素があり、今でも新鮮さを失っておりません。