ジム・オルーク『ユリーカ』

ユリイカ

ユリイカ

今さら何も付け加えるものはない問答無用の名盤ですが、最近よくリピートしています。これを聴く度に思い出すのは、

僕がほんとうの意味で革新的だと思うのは、「実験精神」と「心地よい音楽」というふたつの要素が純粋な形でとり入れられ、調和された作品なのである。―ジム・オルーク

という言葉で、まるで自作解説のようですが、これはポール・マッカートニーについて語った言葉なんですね(ジム・オルークはあまりジョン・レノンを評価していません。「ビートルズの本当の名曲を書いたのはポールばかり」なんて発言もしてます。)。これまでのソロではノイズやエクスペリメンタル・ミュージックを展開してきたオルークが大胆にポップ・フィールドへ踏み出したとして話題を呼んだ作品ですが、本人の意識では転身でも後退でもなくて音楽的冒険のひとつの形であったことが時を経るごとに明らかになってきたと思います。ポール・マッカートニーや実際にこのアルバムでカヴァーしているバート・バカラックアヴァンギャルドな面を見出し、共振させる試みであったといえるでしょうか。某バンドの言葉を借りれば「アヴァンギャルドの向こうに見える青い空」を追いかけた音楽なんですよ(笑)。私が最もときめくポップ・ミュージックのひとつの形がここにあります。これをきっかけに本格的にジム・オルークという名前を意識した忘れられないアルバムですね。