エマーソン、レイク&パーマー「ELP4部作」

ELP四部作

ELP四部作

バンドの絶頂期を捉えた「恐怖の頭脳改革」から4年のブランクを経た1977年に発表。もし前作から間髪おかずにこの作品が出ていれば、存外もっとスムーズに受け入れられたような気がします。ピンク・フロイドにおける「ウマグマ」のような位置として落ち着いたのでは?。しかし実際にはここからELP苦難の道のりが始まったわけでした。


LP2枚組で各面にメンバーのソロ、そして最後の1面にグループとしての新曲という構成。聴きどころはキース・エマーソンのピアノ協奏曲とELPとしての新曲といえるでしょう。エマーソンのピアノ協奏曲は斬新さはないけれどかなりマジなつくり。第3楽章のパーカッシヴな曲想なんて実に彼らしい。特に出来がいいのは第1楽章で、ちょっとかしこまった中に結構ポップなメロディを聴かせてくれます。
グループ・サイドはまずアーロン・コープランド「庶民のファンファーレ」のカヴァー。原曲はほんとにファンファーレだけで終わってしまうのですが、ELPは後半にシンセ・ソロを延々と聴かせる構成に改変。これ原曲を超えてると思います。続く「海賊」は歌詞にピート・シンフィールドを迎えてオーケストラをバックにしたパノラマ的展開をみせる力作です。カール・パーマーのお騒がせドラムが奥に引っ込んでいるのが個人的にポイント高いのですが、ロックとしてのダイナミズムに欠ける面があるのは確か。
カール・パーマーは当然自分のサイドでは叩きまくり。プロコフィエフ「スキタイ組曲」やバッハといったクラシックからデビュー・アルバム収録の「タンク」のセルフ・カヴァーまで幅広くこなしていますが、やっぱりこの落ち着きのない感じのドラミングは苦手です。
グレッグ・レイクは一番予想通りのパターンで、甘々のラヴ・ソングばかり歌っています。よせばいいのにエマーソンに対抗してオーケストラまで導入しちゃったので、大袈裟さが際立つことに・・・ああ、でも実は一番私が頻繁に聴き返すのがこのグレッグ・レイク・サイドなのです。なにせELPのベスト・ソングが「スティル・・・ユー・ターン・ミー・オン」という男ですからね。レイクのシンガー・ソングライター的側面が大好きなんです。このアルバムが好きという人でもここでのレイクのソロを褒めている人はあまり(というか、私が知っている限りでは皆無)いないのですが、私はひっそりと擁護しつづけますよ。万が一、ギター1本だけで歌っているデモ音源が発掘されたら少しは見直されるかな?