SPIROGYRA「Bells,Boots And Shambles」

Bells, Boots & Shambles

Bells, Boots & Shambles

いつのころからか“ブリティッシュ・フォークの3美神”と形容される一群のグループがありまして、チューダー・ロッジ、メロウ・キャンドル、そしてこのスパイロジャイラの3つを指します。それぞれ美声の女性ヴォーカルを擁していたことからこう呼ばれていたのですね。チューダー・ロッジは和やかな温かいハーモニーを聴かせ、メロウ・キャンドルはややドラマティックでロック色が比較的濃い感じがありますが、どちらも名盤で期待を裏切ることはないでしょう。この2組に比べて曲者なのがスパイロジャイラです。マーティン・コッカーハムとバーバラ・ガスキンの男女2人がヴォーカルをとるのですが、曲作りも担当しているマーティン・コッカーハムの声がちょっとクセのある、美声とはいいかねる声なんですね。私はどちらかというとマーティンの声は苦手で「頼むから黙っててくれ〜」と初めて聴いたときはスピーカーに向かってつぶやいてしまいました。最近は慣れてしまいましたが・・・。彼が生み出す曲もちょっとへんてこな面白い個性があります。特に1stはフォークというより「ねじれポップ」といってもいいくらい。今回取り上げた3rdは彼らの最高傑作と呼ばれているアルバムですが、1stのころのねじれポップの片鱗はまだうかがえるものの、クラシカルなアレンジが前面に出て、ぐっと気品を増した作品に仕上がりました。こうなるとバーバラ・ガスキンの、これは掛け値なしに素晴らしい儚げな声の魅力が際立ちます。簡単に酔わせてはくれないけれど、一度はまると桃源郷に誘ってくれる傑作。