アネット・ピーコック「アン・アクロバッツ・ハート」

アン・アクロバッツ・ハート

アン・アクロバッツ・ハート

  • アーティスト: アネット・ピーコック,シカダ・ストリング・クァルテット
  • 出版社/メーカー: ユニバーサル インターナショナル
  • 発売日: 2000/10/21
  • メディア: CD
  • この商品を含むブログ (1件) を見る
うつらうつらしながら聴いていた音源。最近70年代の音源をまとめたアルバムも出ているようですが(前回のセレクトで天パーさんがこの時期のアルバムから選んでいましたね)、これは2000年に出た作品。ECMからの初リリースです。彼女と縁の深いポール・ブレイゲイリー・ピーコックはECMに多くの作品を残していて、そこで彼女の曲を頻繁に取り上げているのですが、彼女自身は意外なことに今まで関係が無かったんですね。
バッキングを務めるのはノルウェーで活躍している、シカーダ・ストリングス・カルテットとアネット本人のピアノだけというシンプルなもの。ストリング・カルテットとの共演をアネットに提案したのはECMの総帥、マンフレット・アイヒャーとのことですが、このアイヒャーのアイデアが見事にこの作品で実を結んでいます。ピアノもストリングスもアネットのヴォーカルも特に技巧を凝らしたり、派手な演出は一切していないのですが、そのことが返ってアネットの曲の特異な美しさを浮き彫りにすることに貢献しました。シンプルでありながら複雑な味わいがあり、陰りをもった色彩が滲み出てきます。抑制された柔らかい表現から零れ落ちてくるほろ苦さと痛みが素晴らしい。そう、これはECMから出ているけど、優れたSSWのアルバムであり、その物哀しい響きにはどこかロバート・ワイアットに通じるものを感じます。もしアネットのトリビュート・アルバムが企画されたら、ぜひこのアルバムの曲をワイアットに歌ってもらいたい。