アンドロイド・シスターズ「ベスト・オブ・アンドロイド・シスターズ」(asin:B0006BA1L6)

huraibou2004-12-29

駄目ジャケ百選に選んでもいいようなジャケットですが、このアルバム、ヤン富田のファン、中でもドゥーピーズが大好きという方なら、とにかく聴くしかありません。なにしろドゥーピーズを制作するきっかけとなったアルバムなのですから。


彼女達の生みの親はティム・クラークという男。68年から電子音楽を作り始めたティムが、81年にルビーという名のヒロインが主人公のラジオSFドラマ「ルビー」の音楽を手がけることになったのがアンドロイド・シスターズ誕生のきっかけでした。ストーリーに膨らみをもたせるために原作を手がけたトム・ロペスがP.K.ディックの小説「アンドロイドは電気羊の夢を見るか」に刺激を受けて持ち出したアイデアが、「もしアンドリュー・シスターズがアンドロイドだったら・・・」というもの。これを基に「銀河をまわるデジタル・サーカスで、皮肉と風刺を込めた物語を語る2人組みの女性アンドロイド」というキャラが考えだされたのです。


こうして生み出されたアンドロイド・シスターズは、エンジェルと(もうひとりの)エンジェルのコンビが当時の社会を皮肉りながら歌ったり、おしゃべりしたりと大活躍。ドゥーピーズのファンならスージーとキャロライン・ノヴァクのやりとりを思い出さずにはいられません。ティム・クラークがムーグ・シンセサイザークラビネットフェンダー・ローズ、ローランド・リズム・マシーンやヴォコーダーなどを駆使して作り出したサウンドは、チャーミングでありながら、ねじれた要素もたっぷりのテクノ・ポップ。本人の言によれば「とてもシンプルながら、しかしストレンジで耳をひくようなサウンドを狙っていたんです」とのこと。ヤン富田が注目するのも納得ではないでしょうか。


ドゥーピーズの10年前に生まれ、ドゥーピーズの10年後にCD化されたこのアルバム、解説が大変充実しています。ティム・クラークへのインタビューも収録されているのですが、事前にインタビュアー(エムレコードの江村幸喜氏)が送り届けたドゥーピーズのアルバムを聴いた感想もあり読み応えたっぷり。なお、ティムによるとブッシュ政権があまりに酷すぎるため、銀河にいるアンドロイド・シスターズと再び交信して、最近カムバックさせたそうです。いつか新作が出る日も来るかもしれませんね。