渡辺香津美「エスプリ」

エスプリ

エスプリ

96年発表。このアルバムに先立ち、アコースティック・ギターによる作品を2枚出した渡辺香津美がその成果を踏まえて、改めて「エレクトリック・ギターも実はアコースコティック楽器ではないか」「ラウドでなくても、ドライヴ感を表現できる」(いずれもライナーノートより引用)との認識で臨んだ作品です。タイトルの「エスプリ」には言葉本来の意味の他にエスエスニック、プリ→プリミティヴの意味を持たせているとか。
共演者はパーカッションのミノ・シネルとベースのスクーリー・スヴェリッソン。なんでもミノ・シネルの野外フェスティヴァルでの演奏を目にして衝撃を受け、楽屋へ乱入し「いつか一緒にやろう」と呼びかけたそうです。ミノ・シネルって地味なようですが(と思っているのは私だけかな)、経歴がものすごい。マイルス・デイヴィス・バンド、ウェザー・リポートを渡り歩き、スティングのツアーにも参加してます。そうそう、マイルス・バンドの前にゴングのカッコいいジャズ・ロック・アルバム「Gazeuse!」にも参加していたはず。スクーリー・スヴェリッソンについては詳しくないのですが、ここでは弾力性のある柔軟な演奏が印象的です。
この2人の伸縮自在なビートに支えられ、香津美は伸びやかに演奏しています。ギンギンに弾きまくっているのではなくて、遊び心を感じさせるのがいいんですよね。ベートーヴェンスティーヴィー・ワンダーのカヴァーもお手の物って感じですね。火花散るセッションを期待している向きにはお勧めできませんが、ちょっぴりエスニックな多彩なリズムと香津美のギターの絡みは、最後まで楽しく聴くことができるものです。