ハットフィールド・アンド・ザ・ノース「ハットフィールド・アンド・ザ・ノース」(ASIN:B000000I02)

hatfield

カンタベリー・ミュージックを象徴するバンド、ハットフィールド・アンド・ザ・ノースのアルバムが待望の紙ジャケで登場。今回取り上げたのは1stです。リマスターで音質が向上しても、薄曇りの空の下で演奏しているかのような感触は変わらず。さらっと聞き流すと、まろやかな演奏のためカフェ・ミュージックとしても充分機能するのでは、なんて思ってしまうのですが、じっくり聴くと非常に高度なインタープレイが展開しているのに気づかされる、という騙し絵的面白さがこのグループの魅力ですね。リチャード・シンクレアのベースは意外と雄弁で、ピプ・パイルのドラムと絶妙のコンビネーションを聴かせてくれます。デイヴ・スチュワートのキーボードはこのバンドの顔と呼ぶのにふさわしい多彩な表情を見せ、フィル・ミラーのギターは地味渋でいい味出してます。この4人のアンサンブルに加えて、ロバート・ワイアットをゲストに迎えたり、「ノーセッツ」と称する女性コーラス隊(アマンダ・パーソンズ、バーバラ・ガスキン、アン・ローゼンタール)が華を添えたりしながら、比較的小品を連ねて進んでいくというのがこのアルバムの構成(10分超の曲もあるのですが)。ところどころにトボケたユーモアが感じられるのが、私的にツボです。大仰なところが全く無い、着流しの達人といった趣のあるこのグループ。もしソフトロックのファンで、プログレに興味を持った方(なんているのか?)がいるとしたら、ここから入門するのがいいかもしれません。続く2ndアルバム「ロッターズ・クラブ」もやはり名作ですよ。