ルイス・フューレイ「ルイス・フューレイ」(ASIN:B00005R0VV)

かつて熱心に聴いていたセルジュ・ゲンスブールへの関心が最近はほとんどなくなりました。フランス・ギャルは今でもたまに聴き返すことがあるのですが・・・。その原因のひとつにこのアルバムを知ったということがあります。75年発表のルイス・フューレイ、記念すべき1stアルバム。その冒頭の「ハスラーズ・タンゴ」には、セルジュの全作品を優に超えるエロティシズムとデカダンスがありました。わざとらしい薄っぺらな歌唱がチープな印象を与えるどころか、逆に妖艶さを増すのに貢献しているという魔術的な一曲です。その他の収録曲も妖しい魅力に富んだ楽曲揃い。ライナーノートによると、日本以外の国ではCD化されたことがないそうですが、俄かには信じがたいですね。


ルイス・フューレイは1947年モントリオール生まれ。ジュリアード音楽院でヴァイオリンを学んだという経歴があります。諸国を放浪した後モントリオールに戻った彼をA&Mのバリー・クロストが見出し、A&Mから3枚のアルバムを発表しました。私は3枚目のアルバムは未聴ですが、おそらくこの1stを超える作品は出ていないと思います。それほどこのアルバムは素晴らしい。キャット・スティーヴンスも参加しているそうですが、何といっても主人公であるルイス・フューレイの個性が輝いています。このアルバムでのルイスはセルジュ・ゲンスブールよりエロティックで、ブライアン・フェリーよりダンディで、しかもウイットに富んでいるのですから。ニューヨーク録音なのにヨーロッパ的頽廃を強く感じさせる傑作です。