ジョルジュ・アペルギス レクチャー・コンサート at 東京日仏学院 エスパス・イマージュ 

アペルギス


現代フランス音楽界を代表する作曲家のひとりである、ジョルジュ・アペルギス(写真)のレクチャー・コンサートに行ってきました。
アペルギスはアテネ生まれの作曲家で、声や身振りを生かした作品で有名になった人です(もちろん器楽曲も手がけており、31日にそれらは演奏されます)。今回はバリトン歌手のリオネル・パントルが歌う「14のジャクタシオン」と、それに先立つアペルギスの作品説明、演奏終了後の質疑応答といった構成で行われました。
パンフレットによると「ジャクタシオン」とは本来医学用語で、高熱を出した際に見られる四肢の不規則な運動を意味する「転々反側」という意味だとか。解説者も述べているように、その本来の意味を広げた多義性のところにこのタイトルの理由がありそうです。題名どおり14の部分に分かれた曲でそれぞれの部分に趣向と高度な技巧が凝らされ、歌い手は身振り手振りを交えながら歌い進めていきます。ベリオ「セクエンツァ」のようないかにも技巧の極限に挑戦、といった感じもなければヴォイス・パフォーマンス色が濃いわけでもありません。うまい具合に両者の中間にある、ユーモアとエスプリが感じられる作品だったのが個人的には良かったと思います。リオネルの衣装もかしこまったものではなく、普段着に近い感覚。ほっぺをふくらまして唇をふるわせたり、鼻をすすったりする音なども交えた歌唱に、会場ではときどき笑みがこぼれていました。俗な言い方をすればイッセー尾形ハナモゲラ語で芝居をしているような感じなんですよ。発声されるのはアペルギスが響きを考慮して組み立てた架空の言語(すべて譜面にはアルファベットで記載されているそうです)なのですが、ところどころにちゃんとしたフランス語らしきもの(私の語学力不足で明言できず)や、英語が混じり、耳をそばだてずにはいられない構成になっていました。上で「いかにも技巧の極限に挑戦、といった感じもなければ」と書きましたが、実際は非常に高度な技巧と持続力を要する作品で、終演後のリオネルの顔は汗だらけ。私はアペルギスの作品に接するのは初めてだったのですが、なかなか楽しめました。シアター・ピース的な面もある作品だったので、生で見られて良かったですね。

(参考)作曲家、演奏家のプロフィール、コンサートプログラムについて

http://www.ifjtokyo.or.jp/culture/evenements_j.html#SI