PANTA & HAL「1980X」(ASIN:B000228UC6)

後のワールド・ミュージックを予見していたかのような、ヴァラエティに富んだサウンド・アプローチを見せた「マラッカ」と本作、両者甲乙つけがたい出来ですが、ソリッドなサウンドが久々にロックの快感を思い出させてくれたこの作品を取り上げます。80年代的サウンドがダサく聞こえていた90年代を過ぎ、私の中では今、ようやく70年代と80年代のサウンドを同じ視点で楽しめるようになりました(80年代は70年代の音がこの上なくどん臭く感じていました・・・はっぴいえんどなんて当時は聴けたもんじゃないと思っていましたから)。ニューウェーヴの波に正面から立ち向かったアプローチがこの上なく刺激的で、血を熱くさせます。ディーヴォの3rdを思わせる骨格だけのシンプルなバンド・サウンド。ねじくれたギターが耳を刺し、タイトなビートと熱いヴォーカルがまっすぐに飛び込んでくる。ボトムの軽さも逆に疾走感を増すのに一役買っているような気さえします。リマスタリングで音の粒立ちが際立ち、カッコよさがよりストレートに伝わってくるアルバムとなり甦ったのはうれしい限り。年寄りくさい言い回しだけど、今の若い人にこのアルバムがどう響くか、とても知りたいです。