第8回セレクト合戦「休日に聴きたい音楽」曲目発表

メリー・ホプキン

音楽仲間とお題を選んで、選曲したCD−Rを交換しあう「セレクト合戦」。今回のお題は「休日に聴きたい音楽」となりました。私の場合は、おだやかで和める休日をイメージ。そして、全部イギリスもので選んでみました。


1)TUDOR LODGE / Kew Gardens(1971)


収録アルバム「TUDOR LODGE」(チューダー・ロッジ)。ブリティッシュプログレッシヴ・フォークの3美神のひとつに挙げられるグループ(残りの2つはメロウ・キャンドルとスパイロジャイラ)。オリジナル・メンバーによる唯一のアルバムは全編温かいハーモニーに包まれた牧歌的世界が楽しめる、ソフト・ロックにも通じる魅力のある名盤です。ショック太郎さんも同じアルバムから別の曲を選んでますね。ショック太郎さんのHP
に素敵なアルバム・レヴューもありますので、興味を持った方はぜひごらんください。


2)DONOVAN / Happiness Runs(2002)


収録アルバム「Pied Piper」(Pied Piper)。現代の吟遊詩人、ドノヴァンの最新作から。「イン・コンサート」で原曲が歌われ、69年作「バラバジャガ」で完成形が披露されたオリジナルのセルフ・カヴァーです。ウイスパー・ヴォイスのコーラスとチャイムにグロッケン、カモメのSEが加わり、よりファンシーな魅力が増しました。「幸福は海に浮かぶ小舟のように円を描いてまわる・・・」の歌詞の通り、シンプルなメロディーがドノヴァンとコーラスの輪唱でくるくるまわる。
今回のセレクトのお題は、P5さんの掲示板で出た企画が発展したものです。そこで私が挙げたのがこの曲でした。


3)MAGNA CARTA / Airport Song(1970)


収録アルバム「四季」(シーズンズ(紙ジャケット仕様))。大憲章という物々しいグループ名の割りには爽やかな音楽を奏でるグループです。チューダー・ロッジと同じく、ヴァーティゴ・レーベルから出た代表作からの曲。前半部の英国の四季を描いた組曲が高く評価されていますが、後半の小曲もなかなかのもの。特に最後を飾るこの曲は、サイモン&ガーファンクルが英国に渡ってボサノヴァを演奏したかのような、軽やかなギターとハーモニーの魅力に富んだ名曲ではないでしょうか。プロデュースはガス・ダッジョン。トニー・ヴィスコンティリック・ウェイクマンも参加してます。


4)RENAISSANCE / Carpet Of The Sun(1973)


収録アルバム「燃ゆる灰」(燃ゆる灰(紙ジャケット仕様))。実は天パーさんが以前のセレクトで選んでいた曲。すっかり忘れてました・・・。名曲はこうして語り継がれていくのです、と言ってみたりして(笑)。初期の代表作からの人気曲ですね。後年になるとオーケストラの比重が増すので見えづらくなりますが、クラシカルなだけでなく、フォークとも音楽的接点が濃いことがこのアルバムからはうかがえます。


5)McDONALD and GILES / Flight Of The IBIS(1970)


収録アルバム「McDONALD and Giles」(Mcdonald & Giles [HDCD])。「クリムゾン・キングの宮殿」の主役はロバート・フリップではなくて、この2人でした。しなやかなビートを叩きだしたマイケル・ジャイルズと、「風に語りて」「クリムゾン・キングの宮殿」を作曲してグループの「静」の面を演出し、サックス、フルート、ギターと演奏面でも大活躍したイアン・マクドナルド。ところが彼等はアメリカ・ツアーの後、クリムゾンからの脱退を決意してしまいます。フリップは「自分が辞めるから残ってくれ」とまで言って引きとめますが、「クリムゾンは君(フリップ)のバンドだ」と断ったのでありました。その2人が唯一残したアルバムは、これこそ真のプログレッシヴ・フォークと呼びたい大名盤。今回選んだ曲は、2人が脱退後のクリムゾン本体2nd収録曲「ケイデンスとカスケイド」の原曲としても有名です。


6)SANDY DENNY / Listen Listen(1972)


収録アルバム「Sandy」(Sandy)。ブリティッシュ・フォークの至宝サンディ・デニー。伝承曲を見事な歌唱で歌っただけではなく、ソングライターとしても素晴らしい才能がありました。彼女が残したソロ・アルバムはわずか4枚。今回の曲は2ndから選びました。若くして亡くなった彼女の、実力のみならずレッド・ツェッペリン「限りなき戦い」に参加するなど、人気も絶頂だったころの充実作です。のびやかで深みのある歌唱を味わってください。


7)KEVIN AYERS / Whatevershebringswesing(1972)


収録アルバム「Whatevershebringswesing」(Whatevershebring)。以前の日記でも取り上げました。生粋のボヘミアン体質、ケヴィンの名作3rdのタイトル曲。サビのヴォーカル・ハーモニーは盟友ロバート・ワイアット。とろけるようなギター・ソロはマイク・オールドフィールド。元々アヴァンギャルドな音楽性だったケヴィンですが、イビサ島でリラックスした生活を送るうちに、初期のビートルズラヴィン・スプーンフルのような曲が書けるようになってきたとか。この曲にはその片鱗が表れているのではないでしょうか。


8)MIKE D'ABO / Poor Man's Son(1972)


収録アルバム「Down At Rachel's Place」。22歳でマンフレッド・マンのヴォーカリストとなり、「マイティ・クイン」やムーンライダーズもカヴァーした「マイ・ネーム・イズ・ジャック」を歌ったマイク・ダボ。3年後にソロの道を歩み始めた彼がA&Mからリリースした2ndアルバムからの曲です。ピアノ・トリオとフルートによるシンプルな編成により、味わいのある歌が冴えますね。


9)MARY HOPKIN / Jefferson(1971)


収録アルバム「ベスト・オブ・メリー・ホプキン」(ASIN:B0000564DD)〔写真〕。元々はシングル「水と紙と土」のB面曲でした。ポール・マッカートニーに見出されてデビューした、アップルのシンデレラ。デビュー曲「悲しき天使」は世界で500万枚を売る大ヒット、続くポール作曲「グッドバイ」もヒットと恵まれた出発を果たしたメリーでしたが、ポールの演出によるポップ歌手としての在り方には不満があったそうです。ウェールズ出身の彼女が望んだのはシンプルなフォーク・ミュージック。ポールの手を離れ、後に夫となるトニー・ヴィスコンティとつくりあげた2ndアルバム「Earth song Ocean song」こそ、ヒットはしませんでしたが彼女の本質を伝える名盤です。とはいえポールがプロデュースした1st「Post Card」もポールがいろいろやり過ぎてまとまりこそありませんが、ドノヴァンやニルソンの曲も取り上げていていいですよ。
・・・本題に戻って、彼女のシングルでB面の曲に良く選ばれていたのがギャラガー&ライルによる作品でした。それらは今はベスト・アルバムでしか聴くことはできませんが、個人的にはベスト盤のハイライトを成している名曲ぞろいと思っております。今回の曲もそのひとつ。


10)VIRGINIA ASTLEY / Love's A Lonely Place To Be(1982)


収録アルバム「Hope In A Darkened Heart」。元々はシングルとして出て、日本でも少しヒット。86年に坂本龍一が6曲をプロデュースして話題となった2ndに収録されました。このアルバム、本来ならアコースティック・サウンドが合う彼女の持ち味を殺さずに、教授が素晴らしいエレクトロニクス・アレンジを施した名盤ですよ。リマスターして復刻して欲しいです。はかなげな妖精ヴォイスがたまりません。はっきりいって歌は下手ですが、品があるんですよね。96年に出した「Had I The Heaven」も極上の心地よさ。


11)DUNCAN BROWNE / Give Me Take You(1968)


収録アルバム「Give Me Take You」(ギヴ・ミー・テイク・ユー+2)。典雅という言葉がふさわしいダンカン・ブラウンのデビュー・アルバムからのタイトル曲です。クラシカルなアレンジとダンカン自身によるガット・ギターが繊細な曲調と上手く溶けあっています。このアルバムも全曲捨て曲なしの傑作。ためいきが出るくらい美しい。ダンカン・ブラウンの名前が知らなくても、後に彼が結成したメトロならご存知の方がいるのでは?


12)STACKRIDGE / There Is No Refuge(1972)


収録アルバム「Friendliness」(フレンドリネス)。「田舎のビートルズ」との異名を取ったスタックリッジ、本領発揮の2ndからの名曲でこのセレクトの幕を閉じることにいたしましょう。アルバム全体では、8分を超える大曲があったり、レゲエっぽい曲があったりと変化に富んでいるのですが、そのなかにあってとびきりの美しさを誇るのがこの曲。田園風景が目の前に広がっていくようですね。感動的なハーモニーの後、マイク・エヴァンスによるチェロ・ソロが余情豊かに曲を締めくくってくれます。