マイク・オールドフィールド「オマドーン」(ASIN:B000000I0I)

75年発表の3作目。この後数年のブランクを経て発表された大作「呪文」までの彼は間違いなく天才でした。ブリティッシュ・フォークとミニマル・ミュージックが奇跡的に融合して出来上がった、他のどこにもない音楽をマイク・オールドフィールドは発明したのです。中でもこの「オマドーン」は最も牧歌的なメロディーに満ちており、さらにリズム面でも新たなアプローチを試みて成功した作品といえるでしょう。
前半部は、ゆらめくような動きのメロディーがギターでつまびかれる導入部から始まり、徐々に音楽は高まりをみせていきます。緊張感を高めたところで、リコーダーによる愛らしいメロディーにさっと切り替わるところが見事。そして最後で鳴らされる、アフリカン・パーカッション・グループのジャブラによるビートがこれまでの彼の曲になかった躍動感を生み出しています。
後半部は前半部の緊張感をうけついだ形で始まりますが、やがて落ち着きをみせたところで、チーフタンズのバディ・モロニーによるバグパイプ・ソロになります。これが聴く者のイマジネーションをかきたてる素晴らしい名演。そしてエンディングの「On Horseback」と題されたパートは、やわらかなアコースティック・ギターの調べにのって、マイクの素朴な語りとコーラスが馬の背に揺られることの素晴らしさを説いていくのです。終わりの方では子供たちもコーラスに加わって温かな空気を醸し出し、もうたまりません。やっぱりこれは音楽的な冒険心とマイク生来の歌心が見事に調和した傑作ですね。いつ聴いてもいい気持ちになります。